いとをかし

椎名林檎

夕映ゆうばえにそっと懐おもえば古里ふるさと遠とおい二親ふたおやの顔かお父上ちちうえ母上ははうえよ会あいたい
月並つきなみな価値かちほどもっと幾いくらでも分わかち合あえて嬉うれしかったろう
きょうは偲しのんでいます誰たそ彼がれ秋あき雲くもが捷はしこい擽くすぐったい
皆みんなが皆みんな等ひとしく満みち足たりた場合ばあいにやっと心身しんしんが寛くつろぎ幸しあわせを知しる
絶世ぜっせいの価値かちほどもっと独ひとり占じめした途端とたんこう虚むなしかったろう
きょうは祝いわっています海うみよ山やまよ命いのちはどうせ美うつくしい
噫ああ澄すんでいます真冬まふゆは朝あさ空そらが大おおきい柔やわらかいあの移うつろいも
この恥はじらいも涙なみだに替かえて全部ぜんぶ背負しょい込こんで熟じゅくそう
仕様しょうがないとは決けっして考かんがえないし不要ふよう不急ふきゅうと言いう概念がいねんもない
万事ばんじ便利べんりなだけじゃ勿体もったいないし風情ふぜいを重おもんじたい許ゆるして給たもうも
きょうは恋こいしています彼かは誰だれ春はる命いのちがずっと透明とうめいに
冴さえていきます真夏まなつは夜よるいまが眩まぶしい焦じれったい