「ねえ一層遠く知らない街に隠居して沈默しませぬこと?」
「こんな日々には厭きたのさ ねえ だうぞ攫つて行つて」
逃げ延びて水密桃に未練砂みたいな意識と云ふ次元で
逃げ延びた暑さよ何邊へ揺れが生じ
其の儘怠惰に委ねた最後の青さ
もう還らないと知つた温度も超へられぬ夜の恐怖色
境界に澱むでゐた決心の甘さ
たうに喪つた岸壁打つは引いてくれぬ後悔と濤の色
待ち侘びて凍る馨は混凝土砂みたいな意識と云ふ器官で
待ち侘びた寒さよ何邊へ揺れに動じ
此の儘愛情に模した修正ペンの白さ
現状を必死で繕つては剥いだ素肌に恐怖色
傍観に徹してゐた感慨の淡さ
たうに喪つた雷雨仰ぐは泣いてくれぬ殘忍な雲の色