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声だけ聞かせて

松田聖子

今日きょうおだやかに一日いちにちわる
そんならしをあいしているのに
ねむりぎわふいにかんだ面影おもかげ
まるでわすもののように
もうててしまったはずの過去かこむあなた
なぜいまさらになるのかしら
ナンバーえずにいるなら電話でんわしてみるわ
ただこえだけかせて

「もしもし、わたし…。元気げんきだった?」

言葉ことばなくすほどなつかしいひび
きゅうなみだがこぼれそうになる
こいしい気持きもちをかくした二人ふたり
なが沈黙ちんもくがせつない
記憶きおくさかのぼりながらむね高鳴たかなるの
かえすのならいまのうちよ
退屈たいくつまぎらわすためのまぐれだからと
自分じぶんうそついている

二度にどとはもどれない場所ばしょへ ほんのひとだけ
たびしたこころが まだいたむわ
“いつか またね”とささやいた あのひとこえ
雨音あまおとしてゆく