この世に二人だけ

中島みゆき

あなたの彼女かのじょが描えがいた絵えの
載のった本ほんをみつけた
やわらかなパステルの色いろは
そのままにあなたの好このみの色いろ

あなたは教おしえてくれない
私わたしもたずねたくはない
夕暮ゆうぐれの本屋ほんやは風かぜまかせ
つらい名な前まえのページをめくる

二人ふたりだけ この世よに残のこし
死しに絶たえてしまえばいいと
心こころならずも願ねがってしまうけど
それでもあなたは私わたしを選えらばない

クラクションが怒鳴どなってゆく
つまずいて私わたしはころぶ
放ほうり出だされた本ほんを拾ひろいよせ
私わたしはひとり ひざをはらう

嫌きらいになどなれるはずない
あなたの愛あいした女ひとだもの
夕暮ゆうぐれの凩こがらしにあおられて
あなたと同おなじ苗字みょうじが滲にじむ

二人ふたりだけ この世よに残のこし
死しに絶たえてしまえばいいと
心こころならずも願ねがってしまうけど
それでもあなたは私わたしを選えらばない

二人ふたりだけ この世よに残のこし
死しに絶たえてしまえばいいと
心こころならずも願ねがってしまうけど
それでもあなたは私わたしを選えらばない