捨てるほどの愛でいいから

中島みゆき

夢ゆめでもいいから嘘うそでもいいから
どうぞふりむいて どうぞ気きがついて
あの人ひとにおくる愛あいに比くらべたら
ほんの捨すてるほどの愛あいでいいから

はじめから どうせこんなことじゃないかと
思おもっていたわ
べつに涙なみだを流ながすほどのことじゃない
そうよ たぶん
愛あいを交かわす人ひとの一人ひとりもいない人ひとには
見みえなかった わたしの予感よかんがあたりね
でも気きのつくのが遅おそいわ
それがわたしの悪わるいところよ くり返かえし
一人ひとりの浜辺はまべに打うちあげられるだけ
わすれられて
わすれられて さまよい揺ゆれるだけ

夢ゆめでもいいから嘘うそでもいいから
どうぞふりむいて どうぞ気きがついて
あの人ひとにおくる愛あいに比くらべたら
ほんの捨すてるほどの愛あいでいいから

誰だれにでも やさしくし過すぎるのは
あなたの軽かるい癖くせでも
わたしみたいな者ものには心こころにしみる
はじめから いっそ冷つめたくされれば
こんな夢ゆめも見みないわ
いいえ それでも愛あいを待まちわびるかしら
でも あなたの胸むねの中なかは
あの人ひとのためによせる愛あいで満みたされて
わたしの姿すがたは波間なみまに消きえるだけ
わすれられて
わすれられて さまよい揺ゆれるだけ

夢ゆめでもいいから嘘うそでもいいから
どうぞふりむいて どうぞ気きがついて
あの人ひとにおくる愛あいに比くらべたら
ほんの捨すてるほどの愛あいでいいから

夢ゆめでもいいから嘘うそでもいいから
どうぞふりむいて どうぞ気きがついて
あの人ひとにおくる愛あいに比くらべたら
ほんの捨すてるほどの愛あいでいいから

夢ゆめでもいいから嘘うそでもいいから
どうぞふりむいて どうぞ