日本語

お島千太郎

美空ひばり

はなはさいても他国たこくはる
どこかさびしいやまかわ
たび役者やくしゃながれるくも
かぜきよでけもする

「おしまさん
もう若旦那わかだんなぶのはよしてくんな
いまおれらは檜屋ひや若旦那わかだんなでも
千太郎せんたろうでも ありゃしない
追手おってをくらます十蔵じゅうぞう一座いちざ旅役者たびやくしゃ
よう見真似みまねにわ役者やくしゃ
けのかわをはがされずに
ここまでげおうせたのは
しまさん
みんなおまえさんのおかげだよ」

わたどりさえ一緒いっしょべる
れがなければつらかろに
くちでけなして こころでほめて
しま千太郎せんたろうたびすがた

「おしま…… おまえ真心まごころ
だれよりもおれらが一番いちばんにしみている
くちにはしてわねえが
こころなかじゃ何時なんじだって
わせてれいっているんだ
こんなにくるしいおもいをしながら
どうしておれらにつくしてくれるのかと
不思議ふしぎおもときもある
だが故郷こきょうかえって檜屋ひや看板かんばんをあげたら
そのときはおしま旅芸人たびげいにんあしあらって
おれらの世話女房せわにょうぼうに……」

ひとこころ草鞋わらじひも
くもむすぶもむね次第しだい
苦労くろうけあうたびぞら夜空よぞら
つきとれる夫婦ふうふかさ