最後の一本

美空ひばり

これが最後さいごの一本いっぽんよ
頬ほおすりよせて火ひをつけて
じっと見みつめるあなたの瞳ひとみのなか
そこに私わたしはもう居いない
とぎれた言葉ことばを探さがしてる
哀かなしい女おんなの指ゆびさきで
オンザ・ロックがああ溶とけてゆく

これが最後さいごの一本いっぽんよ
そろそろ灰はいになりそうね
まるでふたりの想おもい出でみたいに
燃もえてはかない恋こいもよう
一緒いっしょに暮くらした半年はんとしも
いつかのけんかも約束やくそくも
いまとなってはああみんな夢ゆめ

これが最後さいごの一本いっぽんよ
私わたしにどこかわるいとこ
あったのならばおねがい教おしえて
やりなおしても無駄むだだけど
めがしらおさえてうつむいて
いえいえ涙なみだじゃないのです
やけに煙けむりがああしみただけ