00:00:03
(神父)彼は天に召されたのです
00:00:06
ここにあるのは リヒァルト・ルト
ブラウンの亡きがらにすぎません
00:00:12
彼の魂は 永遠に生き続けるのです
00:00:16
私たちは
彼の魂に誓おうではありませんか
00:00:21
私たちが望みを持って
生きてゆくことを
00:00:24
(ローゼマリーたちの泣き声)
00:00:26
(神父)聖書 詩篇23章には…
00:00:29
(ルーディ)やりきれませんね
00:00:33
さみしい葬式だ
00:00:35
(ライヒワイン)あれだけ
優秀な刑事だったのに
00:00:38
警察関係の参列者は
1人も来やしない
00:00:42
在職中は
アルコールで問題を起こし
00:00:46
あげくの果てが 泥酔しての転落死
00:00:49
警察は そう言ってるんですね
00:00:51
亡くなった日の翌日
00:00:54
リヒァルトは 娘さんと
会う約束をしていたそうだ
00:00:57
(ローゼマリーたちの泣き声)
00:01:03
私は… 私は彼に何をしてやった?
00:01:08
ライヒワイン先生
00:01:10
ただ 椅子に座って 彼の話を聞いて
“君は もう立ち直った”だと?
00:01:17
私は 彼に
何をしてやったというんだ
00:01:23
(ルーディ)Dr.(ドクター)テンマ
00:01:25
彼を捜し出せば
全てが解ける可能性がある
00:01:28
(ライヒワイン)Dr.テンマ
00:01:31
(ルーディ)
おかしいとは思いませんか? 先生
00:01:34
これは ただの事故じゃない
自殺でもない
00:01:37
リヒァルトさんは 死の数時間前に
娘さんと電話で話してるんです
00:01:42
翌日 会おうと
00:01:46
先生 あなたは
やれるだけのことをやった
00:01:50
そして リヒァルトさんは
立派に立ち直っていた
00:01:59
自分を責めるのは やめてください
00:02:03
♪~
00:03:19
~♪
00:03:29
(ライヒワインの荒い息)
00:03:41
(ヘッセ夫人)それでね
00:03:42
(ヘッセ夫人)
聞いてくださいまし 先生
00:03:44
主人ったら 浮気が発覚して以来
00:03:47
私とは まったく
口を利こうともいたしませんの
00:03:50
毎日 毎日 洗車して
その後は庭掃除
00:03:55
私と顔を合わせようともしませんの
00:03:57
そりゃ うちに帰ってこないよりは
ましですけど
00:04:01
こんな毎日じゃ
私 どうにかなりそうですわ
00:04:04
うん?
先生 聞いてらっしゃるの?
00:04:07
(ライヒワイン)あっ…
ああ どうぞ続けて
00:04:10
それでね 私 相手の女のところに
乗り込んでいったんですの
00:04:15
そうしたら
どうなったと思います? 先生
00:04:17
(荒い息)
00:04:23
(マルティン)事件性?
00:04:24
(マルティン)ないですよ
あれは単なる事故です
00:04:28
リヒァルト・ルトブラウンは あの晩
00:04:30
ミュンヘン大学12号館の屋上に
1人で上がり
00:04:34
瓶1本のウイスキーを飲み干し
泥酔したあげく 転落しました
00:04:39
瓶は 十分 調べたのか?
00:04:42
(マルティン)ええ
リヒァルトの指紋が検出されました
00:04:46
(ライヒワイン)
見せてくれないか その瓶を
00:04:49
(マルティン)まあ いいですけど
粉々ですよ
00:04:58
リヒァルト
00:05:03
(ライヒワインの荒い息)
00:05:12
(ルーディ)
おかしいとは思いませんか?
00:05:14
リヒァルトさんは 死の数時間前に
娘さんと電話で話してるんです
00:05:20
翌日 会おうと
00:05:38
うん?
00:05:44
(マスター)ああ この人なら
確かに あの晩 この店に来たよ
00:05:49
(ライヒワイン)1人でか?
00:05:50
(マスター)いやあ
そりゃ 覚えてねえな
00:05:53
来た記憶はあるのに 連れが
いたかどうかは覚えてないって?
00:05:58
(マスター)だって
コーヒーを頼んだからさ
00:06:01
コーヒー?
00:06:02
あの時間に ここへ来て
酒 飲まねえ客 珍しいからよ
00:06:11
その時 この青年と
一緒じゃなかったか?
00:06:16
(マスター)どうだったかな
(ライヒワイン)思い出してくれ
00:06:19
分かんねえよ
客は 山ほど出入りするからな
00:06:23
ただ ウイスキー
買ってったってことは事実だ
00:06:26
ちゃんと伝票に書いてある
00:06:28
本当にリヒァルトが買ったのか?
00:06:30
覚えてねえって
00:06:33
ただ 伝票に“ラッケ 瓶1本”って
書いてあるんだ
00:06:37
今 何て言った?
00:06:42
(マスター)ハァ…
00:06:46
(マスター)ラッケ 瓶1本
(ライヒワイン)んっ…
00:06:54
(ライヒワイン)何で 警察署で
瓶のラベルを見た時
00:06:57
気付かなかったんだろう
00:06:59
(マスター)ええ?
00:07:02
(ライヒワイン)また飲んでるのか
00:07:03
(リヒァルト)いや…
まあ ちょっとね
00:07:07
(ライヒワイン)何を飲んだ?
00:07:08
(リヒァルト)ウイスキー
俺はウイスキー 一本やりでね
00:07:12
フン… ラッケのにおいを
部屋中にプンプンさせおって
00:07:16
(リヒァルト)ラッケ?
冗談じゃない
00:07:18
あんな国産 絶対 飲まねえ
00:07:21
飲むなら本場のスコッチ
これ 決まり
00:07:25
ヘヘヘヘッ
00:07:28
(ライヒワイン)ウイスキーを
買ったのは リヒァルトじゃない
00:07:45
(ライヒワイン)ヨハン
00:07:49
やはり あいつか
00:07:55
んっ?
00:07:58
ま… 待て!
00:08:00
待て こら!
00:08:10
くっ
00:08:13
ぬおおおっ!
00:08:24
(ライヒワインの荒い息)
00:08:54
おい
00:08:55
な… 何だよ
00:08:57
何で 私を突き落とそうとした?
00:08:59
し… 知らねえよ
何 言ってやんだ…
00:09:02
(ライヒワイン)
しらばっくれおって!
00:09:05
うん?
00:09:06
よう じいさん
00:09:08
僕の友達に何か用?
00:09:11
(ライヒワイン)んん…
00:09:13
{\an8}(蹴る音)
00:09:13
{\an8}(蹴る音)
00:09:13
(男性たち)こらっ! おらっ
00:09:15
{\an8}(蹴る音)
00:09:16
{\an8}(蹴る音)
00:09:16
くたばっちまえ
00:09:18
(ライヒワイン)ううっ!
(男性)このっ…
00:09:21
うっ うう…
00:09:23
ハァ… だ… 誰に頼まれた?
00:09:29
(男性)てええっ!
(ライヒワイン)おおっ… うっ…
00:09:32
ハァ ハァ… 年 考えな
00:09:36
じいさんは おとなしく
孫の面倒でも見てんだな
00:09:39
(笑い声)
00:09:42
(ライヒワイン)ま… 待て こら!
00:09:45
ああ?
00:09:46
(ライヒワイン)ぐうっ!
(男性)うおっ
00:09:48
(うめき声)
00:09:52
(ライヒワイン)待て!
(男性)ひっ…
00:09:53
(ライヒワイン)ぐっ ううっ…
00:09:55
こちとら
国境警察で鍛え上げたんだ
00:09:55
{\an8}(うめき声)
00:10:00
何で 私を突き落とそうとした!
00:10:03
し… 知らねえよ
00:10:05
元警察医をなめんなよ
00:10:07
た… 頼まれたんだよ
00:10:10
誰に!
00:10:11
でかい男に! ぐっ…
00:10:13
でかい男?
00:10:15
(男性)地下鉄の通路で
すれ違った男が 金くれたんだよ
00:10:19
あんたを突き落とせって
00:10:22
(ライヒワイン)くっ…
(男性)ううっ
00:10:24
(2人のうめき声)
00:11:12
買ってきたぞ リヒァルト
00:11:15
本場のスコッチだ
飲みたかったろ?
00:11:26
もういい 思いっきり飲め
00:11:36
リヒァルト 任せとけ
00:11:40
絶対に突き止めてやる あいつの…
00:11:46
ヨハンの正体を
00:12:03
(ヘッセ夫人)でね 先生
私 主人に言ってやりましたの
00:12:07
あなたの浮気癖は
病気みたいなもんだって
00:12:11
あなたこそ 先生のところで
カウンセリング受けたらってね
00:12:18
先生 聞いてらっしゃるの?
00:12:20
(ライヒワイン)えっ…
ああ もちろん ヘッセさん
00:12:24
(ヘッセ夫人)どう思います?
主人が あの調子じゃ⸺
00:12:27
私のうつ病は
ひどくなる一方ですわ
00:12:31
いや 奥さんは
別に うつ病じゃないですよ
00:12:35
えっ?
00:12:36
それよりも 毎日 黙って
洗車と庭掃除をしているという⸺
00:12:41
ご主人のほうが心配ですね
00:12:43
でしょ? 変ですよ どう見たって
00:12:47
先生 お願いします
00:12:49
いっぺん 診てやってくださいまし
00:12:51
(ライヒワイン)いいでしょう
00:12:53
そうですね
あさっての夕方5時なら空いてます
00:12:57
(ヘッセ夫人)
主人に聞いてみますわ
00:13:02
あの ずうたいばっかり でかい
浮気男を
00:13:05
ひとひねりしてくださいな
00:13:06
ハハハハ…
00:13:08
(ドアの閉まる音)
00:13:14
(ライヒワイン)ハァ…
00:13:21
(メレス)先生
今日の診察は これで終わりです
00:13:25
ああ 今日は もういいよ
メレスさん
00:13:28
それじゃあ お先に
00:13:30
あと メレスさん
00:13:31
昨日も また 裏のドアの鍵
閉め忘れてたよ
00:13:35
ああっ いけない
今日も忘れるとこだった
00:13:38
ああ また やっちゃった
00:13:40
お疲れさま
00:13:44
(電話の操作音)
00:13:49
(電話の呼び出し音)
00:13:54
(ライヒワイン)
やあ Dr.ギーレンか
00:13:57
ライヒワインだ
00:13:59
新聞 見たよ
00:14:02
ああ 君の出した新聞広告
00:14:05
“カンニングの思い出を
語り合おう ルーディより”
00:14:10
こんな文章で 本当にDr.テンマは
連絡を取ってくるのかね?
00:14:15
(ルーディ)ええ
もし テンマが それを見たら 必ず
00:14:19
いや 私たち2人だけしか
知らない話でしてね
00:14:23
(ライヒワイン)なるほど
00:14:25
(ルーディ)先生 彼が現れるまで
むちゃは しないでください
00:14:29
(ライヒワイン)分かっている
00:14:30
だが 1つだけ
調べておきたいことがあるんだ
00:14:33
(ルーディ)何です?
00:14:35
マルゴット・マルゴットランガーの名を
かたった娼婦(しょうふ)だよ
00:14:39
リヒァルトは こう言ってたんだ
00:14:42
自殺したファーレンが
あの女に会いに行った時
00:14:45
もう1人 青年が一緒にいた
00:14:48
金髪の美しい青年がね
00:14:53
(ルーディ)
気を付けてください 先生
00:14:55
分かっている
00:14:57
全てを暴くためにも
ここは慎重にいくよ
00:15:01
死んだリヒァルトのためにもな
00:15:04
じゃあ また連絡するよ
00:15:07
(通話を切る音)
00:15:13
(大きな物音)
(ライヒワイン)んっ?
00:15:19
ハァ…
00:15:21
メレスさん
今日は窓を閉め忘れてるぞ
00:15:29
(女性)マルゴット・マルゴットランガー?
知らないね
00:15:33
(ライヒワイン)いや…
00:15:34
今のあだ名は 何とかのソフィとか
いうはずなんだが
00:15:38
(女性)ああ あのデブのババアね
00:15:41
おじさん ああいうのが趣味?
00:15:42
(ライヒワイン)ああ いや
別に そういうのじゃなくって…
00:15:45
ハッ 照れる年かい
00:15:47
2本目の角 曲がって
古い建物の2階だよ
00:15:50
(ライヒワイン)ありがとう
00:15:52
でも 今 いないよ
00:15:54
(ライヒワイン)えっ?
00:15:55
ここんとこ見かけないね
00:15:57
どっか いいとこでも行ってんだろ
00:15:59
どっか いいとこ?
00:16:02
まったく 何で あのデブの
ババアばっかりモテるんだろ
00:16:07
こないだまでは すっごい
大金持ちが通ってたっていうし
00:16:10
(ライヒワイン)
どこへ行ったんだ?
00:16:12
ねっ おじさん 私なんか どう?
00:16:14
あんなババアより
絶対 楽しませてやれるよ
00:16:18
(ライヒワイン)
どこへ行ったか知らないか?
00:16:20
知らないよ
00:16:22
あの新しい男と
どっか行ったんだろ
00:16:24
新しい男?
00:16:26
ああ 年がいもなく
あのババア 夢中になってさ
00:16:31
でかい男さ
00:16:32
でかい男…
00:16:34
あっちのほうも でかそうな男だよ
00:16:42
あの… 先生
00:16:43
今日は 私 これで
失礼してよろしいでしょうか
00:16:47
(ライヒワイン)ああ そうか
今日は5時までだったね
00:16:50
予約は あとは例の浮気旦那
1人だけだから いいよ
00:16:55
デートだろ? メレスさん
00:16:57
(メレス)やだ 先生ったら
00:17:00
(ライヒワイン)
戸締まりだけは よろしくね
00:17:05
ハァ…
00:17:06
マルゴット・マルゴットランガーをかたった
ソフィという売春婦に
00:17:10
この写真を見せて
00:17:12
自殺したファーレンと
一緒だった青年が
00:17:15
このヨハンだったという証言が
得られれば
00:17:19
もう一歩 核心に迫れるんだが…
00:17:22
(ブザー)
00:17:25
(ライヒワイン)はい
00:17:26
(ヘッセ)
家内が予約したヘッセです
00:17:29
(ライヒワイン)ああ どうぞ
上がってください
00:17:35
今夜あたり もう一度
あの女を訪ねてみるか
00:17:41
(ヘッセ)はじめまして
Dr.ライヒワイン
00:17:44
ようこそ ヘッセさん
00:17:46
(ヘッセ)よろしくお願いします
00:17:47
(ライヒワイン)どうぞ 中へ
00:17:50
(ヘッセ)カウンセリングなんて
初めてなもので
00:17:53
緊張することはありません
00:17:55
ここではリラックスして
何でも話すことです
00:17:59
ここでの話は
絶対に秘密厳守となりますから
00:18:03
安心してください
00:18:05
(ヘッセ)家内にもですか?
00:18:07
もちろん
00:18:10
最近は どうですか?
何か悩みとか…
00:18:15
(ヘッセ)悩み?
(ライヒワイン)ええ
00:18:20
(ロベルト)家内に
浮気が ばれましてね
00:18:23
(ライヒワイン)なるほど
00:18:25
(ロベルト)家にいても
所在がなくて
00:18:28
庭掃除したり 車 洗ったり…
まあ そんな毎日で
00:18:33
(ライヒワイン)それで
少しは気分が晴れますか?
00:18:36
(ロベルト)いや…
女房とは全然 口も利きませんし
00:18:41
(ライヒワイン)話したくても
きっかけがない?
00:18:44
いや どうかな
00:18:47
相手の女性は?
00:18:50
(ロベルト)はっ?
00:18:51
浮気相手の女性とは もう…
00:18:54
(ロベルト)ああ
00:18:55
殺しちゃったんです
00:18:57
えっ?
00:18:58
いや 殺した夢を見たんですよ
00:19:03
(ライヒワイン)そういう夢は
よく見るんですか?
00:19:05
(ロベルト)よく見る?
いや 最近は見なくなりました
00:19:13
孤独だったんですよ
00:19:20
それで浮気をなさった?
00:19:24
(ロベルト)
いや 彼に会ってからね
00:19:28
彼?
00:19:28
美しい青年なんですよ 金髪のね
00:19:36
(ロベルト)何人 殺しても
国がなくなっても
00:19:40
私の中では
全てが夢みたいだったんです
00:19:44
でも 彼と会ってから 違ったんです
00:19:50
全てがリアルに見えて
もう 孤独じゃなくなったんです
00:20:04
おっ…
00:20:05
お茶でも… どうですか?
00:20:09
(ロベルト)いえ 私は結構です
00:20:12
(ライヒワイン)私は
ちょっと のどが渇いた
00:20:15
待っていてくれるかな
00:20:24
秘書が帰ってしまってね
デートらしい
00:20:33
彼女のいれたお茶は うまいんだが
お出しできなくて残念だよ
00:20:44
先生
00:20:46
んっ… 何だい?
00:20:48
こういうお仕事をされていると
いろいろ あるでしょう
00:20:53
人の夢を知ってしまうわけだし
00:20:59
知らなくてもいい夢を
知ってしまうと ろくなことはない
00:21:07
特に 私が
人殺しだっていうことなんて
00:21:12
(お湯の沸く音)
00:21:21
と… とにかく
夫婦でやり直す気があるなら
00:21:29
もう一度 話し合って…
00:21:34
(ライヒワイン)鍵を
閉め忘れていてくれ メレスさん
00:21:36
(ライヒワイン)くっ!
00:21:40
(ライヒワイン)でえいっ!
(ロベルト)うわっ
00:22:05
(銃声)
00:22:07
(ロベルト)んっ… うっ…
00:22:09
ああ?
00:22:12
あ… あんたは…
00:22:16
(テンマ)早く逃げて
00:22:18
Dr.テンマ
00:22:20
(テンマ)
ずっと あなたを見張っていた
00:22:22
あなたは狙われている
逃げなさい!
00:22:26
早く!
00:22:28
{\an8}♪~
00:23:33
{\an8}~♪