00:00:04
(ロビー)注文は?
(マルティン)いつものやつ
00:00:08
(ロビー)
いつものやつって何だっけ?
00:00:11
(マルティン)
いいかげんに覚えろよ ロビー
00:00:13
(マルティン)
ハンバーガー チーズはダブル
00:00:16
ケチャップは多め トマトは厚切り
00:00:19
ピクルス入れたら殺す
00:00:21
そんなの 覚えられっかよ
00:00:35
あの中国人だか ベトナム人
00:00:38
お前のこと 嗅ぎ回ってるぜ
00:00:40
ここんとこ よく来るんだ あの客
00:00:44
お前のこと “何者だ?”って
聞いてきたぜ
00:00:51
あいつは中国人でも
ベトナム人でもない
00:00:54
(ロビー)ほう
00:00:56
(マルティン)恐らく 日本人だ
00:00:58
しかも 脳外科医だ すご腕のな
00:01:02
なあ そうだろ? Dr.(ドクター)テンマ
00:01:11
(マルティン)返事しろ!
(テンマ)あっ
00:01:12
(テンマ)うっ うっ
00:01:14
(蹴る音)
00:01:17
でもって 院長令嬢の元婚約者だ
00:01:22
エヴァに何をさせるつもりだ
00:01:24
エヴァ?
00:01:26
(テンマ)うっ うっ…
00:01:28
(マルティン)なれなれしいんだよ
いつまで婚約者のつもりだ
00:01:32
聞くところによりゃ⸺
00:01:34
あんた もう 医者どころか
逃亡犯だそうじゃないか
00:01:37
ちゃんと入るとこ入って出直しな
00:01:40
模範囚なら
いつか出られるかもしれねえ
00:01:43
(テンマ)
うっ… エヴァを解放しろ!
00:01:46
解放?
俺は別に何の拘束もしてないぜ
00:01:51
それどころか あの女
毎日 パーティーざんまいだ
00:01:55
エヴァに会わせろ
00:01:58
会わせろ? ハハハハ…
00:02:03
(テンマ)あっ… うっ
00:02:05
ううっ うあっ…
00:02:05
{\an8}(殴る音)
00:02:08
おいおい 人の店
めちゃめちゃにすんなよ
00:02:11
(テンマ)ううっ うっ うっ…
00:02:14
(マルティン)これ以上
うろちょろすんな 消えな
00:02:18
(テンマ)エ… エヴァを…
00:02:20
消えな
00:02:23
♪~
00:03:38
~♪
00:03:53
(エヴァ)ケンゾーに会った?
00:03:55
(マルティン)ええ 2日前に
00:03:58
まあ 一応 報告までに
00:04:04
あなたに会いたがってましたよ
00:04:11
フッ フフフフ…
00:04:14
殴ったりしてないでしょうね
00:04:17
え… ええ
しませんよ そんなこと
00:04:21
(エヴァ)帰るわよ
(マルティン)え?
00:04:24
今日のパーティーは
もう これでいいんですか?
00:04:27
(エヴァ)今日というよりも
もう パーティーは終わり
00:04:32
多分ね
00:04:38
(チャペック)
ご苦労だったね エヴァ
00:04:40
(チャペック)
これから食事でも どうだね?
00:04:47
(エヴァ)行くわ
00:04:52
(ロビー)で
彼女をレストランに送り届けて
00:04:56
お前は ここで晩飯か
00:04:59
パーティーや高級レストランの
食いもんに比べりゃ
00:05:02
ここのハンバーガーのほうが
よっぽど ましだ
00:05:05
褒められてんだか
けなされてんだか 分かんねえな
00:05:09
(ドアの開く音)
00:05:20
ハァ…
00:05:24
(マルティン)
しつこいな あんたも
00:05:26
また痛い目に遭いたいのか?
00:05:29
消えろって言ってんのが分か…
00:05:36
(テンマ)店長も動くな!
(ロビー)うっ お…
00:05:38
(テンマ)動いたら撃つ
00:05:40
何とも物騒な医者だな
00:05:42
(テンマ)誰から依頼された?
00:05:45
お前の直接のボスが
00:05:46
赤ん坊だということは
分かっている
00:05:49
だが エヴァの護衛を
お前に命じたのは
00:05:51
組織のもっと上の人間だ
00:05:54
誰に命じられた?
00:05:56
知らねえよ 誰だか
00:05:59
だが 顔は知ってるぜ
眼鏡の男だ
00:06:04
(テンマ)眼鏡の男?
00:06:05
そいつはエヴァに
何をさせようとしているんだ?
00:06:08
(マルティン)だから言ったろ
パーティーに出席させてるだけだ
00:06:13
飲んで食って帰る それだけだ
00:06:16
それだけじゃないはずだ!
00:06:18
そこでエヴァは何か特別な
行動を取っているはずだ
00:06:22
ないね
00:06:27
(マルティン)そういや 今日…
(テンマ)今日?
00:06:30
(マルティン)
いや 何てことないんだ
00:06:32
あの女 指さしたんだ
00:06:35
指さした?
00:06:37
若い男をさ
00:06:39
若い男…
00:06:41
(マルティン)こうやって
00:06:43
金髪のきれいな顔をした若い男をさ
00:06:48
ただ それだけだけどな
00:06:52
エヴァは… 今 どこに
00:06:55
その例の依頼人の眼鏡と食事だ
00:06:58
(テンマ)ど… どこだ?
00:06:59
早く言え! それはどこだ?
00:07:03
エヴァの役目は
恐らく それで終わりだ!
00:07:08
(エヴァ)この仕事が終わったら
きっと殺されるわ
00:07:12
もう パーティーは終わり
00:07:15
エヴァは どこに?
00:07:21
待て!
00:07:22
(エンジン音)
00:07:24
(急発進する音)
00:07:41
(マルティン)ハァ ハァ ハァ…
00:07:47
か… 彼女は?
00:07:50
(チャペック)ホテルへ送ったよ
00:07:51
ハァ ハァ…
00:07:57
(チャペック)
君は銃を持っているかね?
00:07:59
い… いや
銃は持たないことにしてるんで
00:08:04
(チャペック)
じゃあ これを使いたまえ
00:08:09
(チャペック)彼女を殺せ
00:08:14
(マルティン)あの時
00:08:16
いつもと同じように
パーティーは繰り広げられていた
00:08:21
酒のにおい 香水のにおい
00:08:25
意味のない笑い
00:08:28
いつもと同じだった
00:08:31
あの瞬間を除いては…
00:08:36
エヴァは ある若い男を指さした
00:08:43
すると そこへ眼鏡の男が
00:08:46
もう1人の身なりのいい
若い男を連れて現れた
00:08:51
それから その若い男2人は
握手を交わした
00:08:56
その時は気付かなかったが
どうやら それで⸺
00:09:00
エヴァの仕事は終わったらしい
00:09:18
やっぱり あなたが
私を殺す役だったのね
00:09:25
どうぞ
00:09:27
お酒もいい具合に回ってきたし
00:09:30
もう思い残すことなんか
何にもないから
00:09:33
フハハハハ…
00:09:37
あっ そうか
00:09:39
このホテルで撃つわけには
いかないか
00:09:42
あんた 前にも
自分の彼女を撃って
00:09:45
血の海の中 立ってたって
言ってたもんね
00:09:49
外へ連れてって撃ちなさいよ
00:09:51
そうしないと 汚した部屋
弁償させられるわよ
00:09:55
ハハハハハ…
00:09:57
あっ 1つだけあった
00:10:00
思い残したこと
00:10:02
まあ どうでもいいんだけどね
00:10:07
私 今日 何をしたのかな
00:10:11
あんた 見てたでしょ?
私が指さしたの
00:10:14
私 きっと
とんでもないことしたんだわ
00:10:18
とんでもない人間を
悪魔に引き合わせたんだわ
00:10:23
メフィストと
ファウストを引き合わせた
00:10:27
ハハハハハ…
どうでもいいんだけどね
00:10:32
ハァ…
00:10:33
今日で
もうパーティーに出る必要は
00:10:36
なくなっちゃったみたいだけど
00:10:39
まだここに これから先の
パーティーの招待状があるわ
00:10:44
よかったら 私が死んだ後⸺
00:10:46
あんた 私が何をしちゃったのか
確かめといてくれない?
00:10:54
さあ そろそろ片付けてちょうだい
00:11:00
逃げよう
00:11:03
俺と一緒に逃げよう
00:11:08
(エヴァ)ハハハ… あんた
何か勘違いしてんじゃないの?
00:11:11
あんたと逃げる?
冗談でしょ ハハハハ…
00:11:16
私たち いつから
そういう関係になったのよ
00:11:21
俺は もう
00:11:23
人は殺せない
00:11:25
(エヴァ)“人は殺せない”?
00:11:27
じゃあ
悪魔なら殺せるっていうの?
00:11:29
私は悪魔よ
00:11:31
あんたに買ってやった
そのスーツもネクタイも
00:11:34
全部 ケンゾーが
昔 着てたのと同じ柄
00:11:37
分かる?
00:11:38
あんたをケンゾー・ケンゾーテンマに
見立ててただけ
00:11:42
殺しなさいよ
00:11:48
早く殺しなさいよ!
00:11:52
早く!
00:11:56
早く殺しなさいよ…
00:12:01
早く殺さなきゃ
00:12:05
あんたが殺される…
00:12:20
悪魔なら殺せる… か
00:12:30
(マルティン)ねえ 起きてよ!
00:12:32
(マルティンの母)大丈夫だよ
00:12:34
ちょいと
酔いさましてくだけだからさ
00:12:37
(マルティン)ダメだよ!
00:12:38
こんなところで寝たら
死んじゃうよ!
00:12:40
(マルティンの母)いいから
ここに置いてっておくれよ
00:12:43
(マルティン)あっ!
00:12:44
(マルティンの母)ん…
00:12:46
ん…
00:12:47
(マルティン)あ…
00:12:51
んっ うっ うっ…
00:13:00
(鳥のさえずり)
00:13:36
さえねえ面だな
00:13:38
俺は いつも さえねえよ
00:13:41
誰か俺を捜しに来なかったか?
00:13:44
いや 誰も
00:13:46
ただ ゆうべの日本人が
これ 置いてった
00:13:52
“ヘルブラウ・ヘルブラウホテル 205号室”
00:13:55
(ロビー)“何かあったら
そこに連絡してくれ”とよ
00:13:59
注文は いつものやつか?
00:14:02
(マルティン)やめとくわ
00:14:04
くそまずいハンバーガーで
腹いっぱいにしちまったら
00:14:06
行く気が失せらあ
00:14:08
どこ行くんだ?
00:14:11
パーティー
00:14:15
(マルティン)不思議なもんだ
00:14:16
ネクタイ1本ありゃ
どこへでも入れる
00:14:20
こんなもん1本で…
00:14:33
いた…
00:14:35
(マルティン)
で あいつは悪魔なのか?
00:14:40
手が腫れ上がるほど
何人もの人間と握手を交わし
00:14:45
そいつは
パーティー会場を後にした
00:15:23
6階か…
00:15:25
(エレベーターの到着音)
00:15:28
(マルティン)
といっても どの部屋だ?
00:15:38
(クリストフ)
どうぞ 中にお入りください
00:15:42
どうぞ こちらへ おかけください
遠慮なさらずに
00:15:52
あなたも彼に会いたいんでしょ?
00:15:55
彼?
00:15:56
(クリストフ)僕も待ってるんです
もうすぐ 彼 来ますよ
00:16:00
彼がやってくるまで
何か話をしましょう
00:16:03
何の話がいいかな…
00:16:06
あっ そうだ
00:16:08
世界が終わる話をしましょう
00:16:13
(マルティン)その若造は
喜々として しゃべり続けた
00:16:17
それはまるで 今日
学校であった楽しかったことを
00:16:21
親に語って聞かせる子供のように
00:16:25
そうやって やつは俺に語った
00:16:29
何が “世界が終わる話”だ
00:16:33
マニアックな若造のたわ言だ
その時は そう思った
00:16:39
どうでした? 面白い話でしょう
00:16:43
楽しんでもらえましたか?
マルティンさん
00:16:47
何で俺の名前を知ってるんだ?
00:16:49
アハハハハ…
00:16:52
そうだ
次は あなたの話をしましょう
00:16:56
赤ん坊のところで
もう 3年になりますか
00:16:59
俺のことを調べたのか?
00:17:01
その前は刑務所にいた
00:17:04
大変でしたね 8年も
00:17:06
模範囚だったんでしょ?
00:17:08
殺人を犯したわりに
早く出所できましたもんね
00:17:12
楽しかったですか?
彼女との暮らし
00:17:16
撃ち殺したというあの彼女ですよ
名前はエッダ
00:17:20
随分と悪趣味だな 坊や
00:17:23
彼女は
ひどいドラッグ中毒でしたね
00:17:26
あなたは必死にドラッグから
足を洗わせようとした
00:17:29
なかなか
できることじゃあないですよ
00:17:32
愛… ですか?
00:17:35
痛い目に遭いてえのか?
00:17:37
彼女は立ち直った
00:17:39
あなたの帰りを
食事を作って待っていた
00:17:43
幸せな暮らしが始まった
00:17:45
殴られてえのかって聞いてるんだ
00:17:48
でも あの晩 部屋に戻ると
00:17:51
とんでもないものが
目に飛び込んできた
00:17:54
彼女の前の男が部屋にいた
00:18:00
再び ドラッグを
やってしまった彼女は
00:18:02
もうろうとしながらも
00:18:04
あなたの姿を見て
何度も何度も言いましたね
00:18:08
“ごめんなさい”
00:18:09
“ごめんなさい ごめんなさい
ごめんなさい”
00:18:13
“ごめんなさい”
00:18:17
でも あなたは
男と共に彼女を撃ち殺した
00:18:20
ということになっていますよね
裁判では
00:18:25
なぜ ウソをついたんですか?
00:18:28
彼女 自殺したんでしょ?
00:18:31
弁護士は
彼女の手に硝煙反応があったので
00:18:34
彼女の死は
自殺と推理していますね
00:18:37
ところが あなたは
00:18:38
自分が彼女を撃ったという
自供を貫いた
00:18:43
彼女 あなたに
殺してくれって頼んだんでしょ?
00:18:48
カハッ 当たり!
当たったんですね
00:18:52
やっぱり そうなんだ
00:18:54
彼女を撃ったのは
あなたじゃないんだ
00:18:57
彼女 あの時 こう言ったんでしょ?
00:18:59
“私を撃って”って
00:19:02
(エッダ)私を撃って…
00:19:05
そんな目で見ないで
00:19:08
殺してよ! 私を殺してよ!
00:19:13
マルティン!
00:19:19
(銃声)
00:19:28
(男性)俺じゃねえ
こいつ 自分で撃ったんだ!
00:19:31
俺じゃねえよ!
00:19:32
ハァ ハァ… うっ あっ…
00:19:36
ハァ ハァ ハァ…
00:19:38
なあ 俺じゃねえだろ? なあ
00:19:48
やっぱり そうなんだ
すごいや 当たりですね
00:19:51
違う
00:19:52
あなたは彼女を置き去りにした
00:19:55
そうやって
彼女の願望をかなえてあげたんだ
00:19:58
違う
00:19:59
じゃあ あなたのお母さんは?
00:20:02
アハッ
00:20:04
あなたのお母さん
00:20:06
あなたが10歳の時
凍死してますよね
00:20:09
あの時も あなた
お母さんを置き去りにした
00:20:13
カハッ
00:20:14
これも当たり?
すごい すごいや
00:20:17
驚いたな ホントに当たるんだ
00:20:20
あなた 毎日 毎日
00:20:22
アル中のお母さんを
家まで背負って連れて帰ってた
00:20:25
そうでしょ?
00:20:26
いつも お母さんは
あなたに言ってた
00:20:28
“ここに置いてってくれ”って
00:20:30
それでも あなたは
毎日 お母さんを背負って帰った
00:20:35
でも あの晩…
00:20:37
(マルティン)ダメだってば!
こんなところで寝ちゃ
00:20:41
(マルティンの母)平気だよ 平気
00:20:43
ここに置いてっとくれよ
00:20:47
(マルティン)あっ… ハァ…
00:20:49
(しゃっくり)
00:20:51
起きてよ!
00:20:52
(マルティンの母)ん…
00:21:08
(マルティン)くっ…
00:21:10
(クリストフ)
置いてきちゃったんだ
00:21:12
そうですよね?
00:21:14
あなたは
お母さんを置いてきちゃったんだ
00:21:17
翌日 知らせがあった
お母さんが凍死したと
00:21:20
でも その時 あなたは思ったんだ
00:21:23
“僕は悪くない”
00:21:24
“お母さんが置いてってくれって
頼んだから そうしたんだ”って
00:21:27
そのとおりですよ
あなたは悪くない
00:21:30
お母さんも ドラッグ中毒の彼女も
死にたがっていたんだ
00:21:34
死にたがっている人を
死なせてあげただけなんだ
00:21:38
あなたは間違ってない
あなたは正しい
00:21:41
生きる苦悩から
彼女たちを解放してあげたんだ
00:21:48
エヴァだって
死にたがってるじゃないですか
00:22:04
(マルティン)ちょうど その時
悪魔がやってきた
00:22:11
俺は 悪魔を見ないように
すれ違った
00:22:16
見ちゃいけない 見ちゃいけない
00:22:19
絶対 見ちゃいけない
00:22:22
俺は子供のように唱えていた
00:22:29
{\an8}♪~
00:23:33
{\an8}~♪