00:00:34
[TEL](呼び出し音)
00:00:39
(服部 哲)
はい 「少年ジャック」編集部です。→
00:00:44
初めての持ち込みですか?
そうですか。→
00:00:50
じゃあ 名前と電話番号を。
真城最高さん。
00:00:56
え? ああ 2人組ですか。
高木秋人さん。 はい。→
00:01:02
じゃあ 例えば
明日とかは どうですか?
00:01:07
(相田聡一)フー フー。
00:01:09
(服部)中学生? へえ。
00:01:12
♪♪~
(オープニングテーマ)
00:01:22
♪♪~
00:01:30
♪♪~
00:02:23
♪♪~
00:02:39
(高木秋人)はい 分かりました。
よろしくお願いします。
00:02:45
明日の15時 受付で→
00:02:48
「『週刊少年ジャック』の服部さんと
約束してます」って言えって。
00:02:52
(真城最高)いきなり
明日ってのが すごいよな。
00:02:55
さすが出版社って感じ。
で どうする?
00:02:58
1時間前に待ち合わせれば
余裕だとは思うけど。
00:03:03
13時に 北谷草の駅にしね?
何となくだけど。
00:03:08
だな。
00:03:12
おれ 原稿 見直してみる。
00:03:15
ああ おれも
セリフのチェックさせてくれ。
00:03:19
(真城二三男)最高は?
帰ってきたんじゃないのか?
00:03:23
(真城加代子)
それが戻ってくるなり
部屋に閉じこもって→
00:03:27
どれだけ根詰めてたのかしら。
いただきます。
00:03:41
回想
かっこいいな~ マンガ家って。→
00:03:44
自分の描いた本が
ずらっと並んで。
00:03:47
(真城信弘)おれは まだ
ばくち打ちだけどな。
00:03:50
ばくち打ち?
00:03:52
マンガ家ってのは
マンガ 描いてるだけで→
00:03:54
一生 食えるやつの事を
いうんだ。→
00:03:57
大当たりするか ある程度の
ヒット作を何本も出すかしてな。→
00:04:02
あとは ただの ばくち打ち。
00:04:05
絵はいいけど おれの話がな。
話はいいけど おれの絵がな。
00:04:17
心の声
おれたちの最初のマンガ。
00:04:25
はえ~よ。
シュージンこそ なんでだよ。
00:04:28
なんでって その…。
00:04:30
前の日 徹夜したのに 妙に早く
目が覚めちまってさ。
おれも。
00:04:36
なんか
いても立ってもいられなくて…。
00:04:44
(2人)プッ。
00:04:46
うちの兄貴に 来週の「ジャック」
もらってこいって言われた。
00:04:49
頼めるわけねえじゃん そんな事。
00:04:52
そういや シュージンの兄貴って
いい大学 行ってんだよな。
00:04:56
国立 落ちた時点で
やる気なくしてる。
00:04:59
今は サークル活動と合コンに
明け暮れる毎日。
00:05:03
青春を謳歌してるってやつ?
先が見えてるっつ~か。
00:05:08
それで マンガ家って思ったんだ。
00:05:10
いや サラリーマンになりたくないって
思ったのは 親の影響かな。
00:05:16
昔 おやじが
大手銀行に勤めててさ…。
00:05:20
回想
お父さん 今日も遅いの?
00:05:22
(秋人の母)ええ。
お兄ちゃんは?
00:05:25
(秋人の母)
塾のテストで遅くなるって。→
00:05:27
あっちゃんも
お兄ちゃんに負けないように→
00:05:30
しっかり勉強してね。
うん…。
00:05:33
そういえば この間のテスト
どうだったの?
00:05:38
<高校の教師だった お袋は→
00:05:40
毎日 熱心に
おれたち兄弟に勉強させてた>
00:05:44
回想
あっちゃん すごい。
00:05:46
<ていうか 勉強を見る事で→
00:05:49
何かを紛らわそうと
してるみたいだった。→
00:05:53
まあ 今 思えばだけど。
ところが…>
00:05:58
回想
(秋人の母)なんでよ!→
00:06:00
それじゃ 上司の責任 かぶって
クビにされたのと同じじゃない!
00:06:04
(秋人の父)しかたないだろ…。
(秋人の母)しかたないって…。→
00:06:07
じゃあ あたしたちはどうなるの?!
ねえ どうなるのよ!
00:06:11
<ぶっちゃけ その時のおれには
何がなんだかよく分かんなくてさ>
00:06:18
回想
ただいま。
お帰り。
00:06:21
お父さん 買い物 行ったんだ。
お母さんに頼まれてな。
00:06:25
今度 僕も一緒に行く。
(秋人の父)ああ 今度な。
00:06:29
約束だよ。
00:06:32
<…で 小5ん時だった>
00:06:34
(秋人の母)仇。
え?
00:06:38
(秋人の母)
お父さんの… 仇とってね。→
00:06:43
あっちゃん…。
00:06:45
<仇って何だ。 銀行に入って
幹部にでもなれってのか?→
00:06:49
おれは そのために
勉強させられてんのか?→
00:06:52
そう考えたら 急に嫌になった
っていうか 耐えられなくなって>
00:06:58
あっちゃん…。
僕は…。→
00:07:02
僕は お母さんの道具じゃない!→
00:07:05
自分の将来は 自分で決める!
00:07:10
まあ それからは
おれが何しようが→
00:07:13
文句 言わなくなったから
いい親なんだけど。
00:07:19
あっ わり~
なんか暗くなっちったな。
00:07:22
じゃあ シュージンが おれと
マンガ家 目指してるって事も?
00:07:26
ああ 知ってるし
スルーしてくれてる。
00:07:31
何だよ。
いや 聞けてよかったよ。
00:07:34
お前 頭いいけど 将来設計だけは
勢い任せじゃねえかって→
00:07:38
ちょっと思ってたから。
ハハ でも そうかもな。
00:07:43
さてと そろそろ行くか。
ああ。
00:07:52
いよいよだな。
00:07:54
中坊のおれたちが持ち込みできる
なんて 夢みたいだ。
00:07:59
原稿さえ描けば
誰でも できるって。
00:08:02
問題は その作品が
どう評価されるかだ。
ああ。
00:08:09
あ…。
お…。
00:08:17
(ガードマン)本日の来社は
どういった目的でしょうか?
00:08:20
あっ あの 僕たち
原稿の持ち込みに…。
00:08:23
では あちらの受付で
手続きを お願いします。
00:08:27
あ… ありがとうございます。
00:08:29
(受付嬢)いらっしゃいませ。
ご用件を 承ります。
00:08:33
僕たち 原稿の持ち込みに
来たんですけど。
お約束ですか?
00:08:37
あ… はい。 15時に
「週刊少年ジャック」の服部さんと。
00:08:42
(受付嬢)でしたら こちらに
ご記入を お願いします。
00:08:46
あ… 僕たち 2人なんですけど
1人1枚でしょうか?
00:08:50
(受付嬢)いえ 人数を記入して
頂ければ 大丈夫です。
00:08:54
あ… あの 僕 まだ
学生なんですけど 会社名とかは?
00:08:58
(受付嬢)それでしたら 念のため
学校名の記入を お願いします。
00:09:03
あっ! すみません
間違えました!
00:09:05
(受付嬢)新しいカードを
お出ししますので。
00:09:08
か… 書きました。
(受付嬢)お疲れさまです…。→
00:09:12
少々 お待ち下さい。
はい。 何時間でも。
00:09:15
少々って言ってるだろ。
00:09:18
(受付嬢)受付です。 高木様
真城様が お見えに。 はい。→
00:09:23
お待たせしました。→
00:09:25
服部は すぐ参りますので
そちらの3番ブースで お待ち下さい。
00:09:30
お手数をおかけしました。
ありがとうございます。
00:09:34
「ジャック」に持ち込んだからって
編集部には通されないんだ。
00:09:38
みたいだな…。
00:09:40
(編集者)君の熱意は
分かるんだけどね。→
00:09:43
もっと 読者を意識しないと。
(マンガ家)はい…。
00:09:46
だから この原稿は
見なかった事にしよう。→
00:09:50
じゃあ また考えて描いてみてよ。
次は 面白いマンガ 待ってるから。
00:09:55
(マンガ家)
ありがとうございました…。
00:09:59
き… 聞いたか 今の。
持ち込みだよな おれらみたいな。
00:10:03
多分。
00:10:05
なんか ここまでは
結構 自信あったんだけど→
00:10:08
ボロクソ言われるような気がしてきた。
00:10:10
初めての持ち込みで
絶賛される方が こえ~よ。
00:10:14
おじさんが言ってたけど→
00:10:16
お茶が出たら とりあえず
合格なんだって。
へ… へえ~。
00:10:20
(服部)高木君と真城君ね。
(最高 秋人)はい!
00:10:24
「週刊少年ジャック」の服部です。
よろしく。
00:10:28
(2人)よろしくお願いします!
00:10:30
(服部)早速だけど
原稿 見せてもらっていい?
00:10:33
あ… はい。 お願いします。
00:10:37
ハハハハハ。 2人とも そんなに
堅くならなくていいから。
00:10:40
は… はい。
00:10:45
心の声
つ… ついに…。
00:10:58
心の声
うっ。
心の声
読むの はえ~っ。
00:11:01
(心臓の鼓動音)
00:11:13
もう一度 読ませてもらうね。
00:11:16
(2人)え?
00:11:31
<「ふたつの地球」>
00:12:09
「エイミー!」。
00:13:01
<真相に近づきすぎた ハヤトは
とらわれの身となった>
00:14:19
<「真実の地球人」たちは降伏した>
00:15:30
よく出来ています。→
00:15:33
僕 コーヒー 飲むけど
君たちは何がいい?
00:15:38
ぼ… 僕たちも
コーヒー お願いします。 なっ?
00:15:41
う… うん。
00:15:44
(服部)えっと ストーリーは
2人で考えてるの?
00:15:48
いえ ストーリーは僕で 絵は真城で
完全に分けてます。
なるほど。→
00:15:54
今から プロになりたいと
思ってるのかな?
00:15:57
はい! できるだけ早く。
心の声
「はい」だけで いいって。
00:16:01
じゃあ ストーリーの方から
意見させてもらうね。
はい。
00:16:05
全体的に SFとして
まとまってるし→
00:16:08
好きな人は 引き込まれる話に
なってると思います。
はい。
00:16:13
(服部)
でも これだと マンガというより
小説に近いんだよね。
00:16:18
ナレーション 多すぎるし
セリフも説明口調。
00:16:22
絵や キャラを通して
話を進めるようにしないと→
00:16:25
マンガにしてる意味がない。
00:16:29
心の声
ストーリーには口を出さないと
決めてたから言わなかったけど→
00:16:32
僕も少し思ってた事だ。→
00:16:35
でも 編集者なら
このくらい言うのは当たり前。
00:16:39
(服部)本当に物語としては
ちゃんと作れてるから→
00:16:42
ライトノベルとかの方が
向いてるって感じかな。
00:16:44
心の声
編集者には 当たり外れがある。→
00:16:46
服部さんは
信用できる人なのかどうか。
00:16:50
(服部)で 真城君だったね。
はい。
00:16:53
(服部)デッサン力は
すごく あると思います。
どうも。
00:16:57
(服部)でも デッサンであって
マンガの絵じゃないんだよね。
00:17:01
線が多すぎる。
人物と背景の線に差がない。
00:17:06
もっと デフォルメして→
00:17:08
自分のマンガとしての絵を
作っていかないと駄目かな。 ん?
00:17:14
はい。
00:17:16
真城は まだ
ペン握って2か月なんです。
00:17:19
2か月? 本当に?
は… はい。
00:17:23
それが本当なら
将来が すごく楽しみだよ。
00:17:28
2人は こういう話が好きなの?
00:17:32
ていうか こういうの「ジャック」じゃ
あんまり見ないし目立つかなって。
00:17:37
(服部)高木君は どうしたら
ウケるか 売れるかを→
00:17:40
計算して書くタイプだね。
え?
00:17:44
これは 僕だけの考えかも
しれないけど→
00:17:47
成功するマンガ家さんは 大きく
分けると 2つのタイプがいる。→
00:17:52
一つは 自分の好きなものを
思い切り描いて→
00:17:55
それが ヒットするタイプ。→
00:17:57
よく言えば 天才。
悪く言えば 天然って事だね。→
00:18:01
それから もう一つが
高木君のように→
00:18:03
計算し尽くして ヒットを出すタイプ。
00:18:06
そして 大ヒットを飛ばせるのは
圧倒的に計算じゃない人なんだ。→
00:18:13
いや 言い方が悪かった。
00:18:16
計算で描く方が ハードル高いとでも
言えばいいのかな。→
00:18:20
逆に言えば 計算で
ヒットが出せる人は強いんだ。→
00:18:24
1作で終わらないし 僕たち編集
だって そっちの方が助かる。 ハハハ。
00:18:30
強制はできないけど→
00:18:32
ほかの出版社には
持って行ったりしないでほしい。→
00:18:35
できれば 君たちは
この先も僕が見ていきたい。→
00:18:41
「ジャック」で一緒に頑張りましょう。→
00:18:44
何かあったら そこに書いたアドレスに
メール下さい。→
00:18:47
時間がある時に
こちらから折り返します。→
00:18:52
メールアドレスくらいで喜んでちゃ
駄目だよ。
00:18:56
金の卵 見つけた時は 迷わず
携帯番号を教えるんだから。 ハハハ。
00:19:02
君たちは まだ銅くらいだよ。
00:19:05
心の声
丁寧に意見してくれた上に
ここまで ぶっちゃけた話。→
00:19:09
信用していいのか。
00:19:11
(服部)この原稿は 一応 月例賞に
回しておくけど いいかな。
00:19:15
(2人)えっ!
00:19:17
月例賞って 毎月 応募作品から
優秀賞を選ぶ あれですよね。
00:19:21
これで通用するんですか?
(服部)そんなに甘くないよ。→
00:19:26
でも マンガの感想は十人十色だし
もしかしたら これでも→
00:19:31
最終選考ぐらいにって言う人が
いるかもしれない。
00:19:35
正直に言うと 僕たちだって何が
当たるか当たらないかなんて→
00:19:39
完ぺきには分からない。
00:19:42
分かれば 新連載が あんな
すぐには終わらないだろ。 ハハハ。
00:19:48
作品を ヒットさせるのって
結構 ばくちなんだ。
00:19:53
回想
あとは ただのばくち打ち。
00:19:56
次の作品が上がったら連絡下さい。
それじゃあ。
00:20:00
よろしくお願いします!
ありがとうございました。
00:20:12
はあ…。 成功だよな?
00:20:16
初めての持ち込みで
名刺に アドレスまで。
00:20:19
シュージンは どう思う?
何が?
00:20:24
おれ 服部さん 当たりだと思う。
00:20:30
ああ おれも そう思う。
00:20:34
(相田)おう どうだった?
中学生の2人組は。
00:20:39
駄目ですね。 少なくとも今は。
00:20:42
ハハハ。 みんなが みんな 新妻エイジ
というわけには いかんか。
00:20:47
(服部)でも 絵の方はペンを握って
まだ2か月だそうです。
00:20:52
原作も まだ こなれてないだけで
アイデア自体は…。
00:20:57
(相田)気に入ったのか?
00:20:59
はい。 14歳ってところが
やっぱり。 それに…。
00:21:05
(相田)2人組は つらいぞ。
00:21:07
そもそも まだ子供だし
いつ けんか別れするか。
00:21:12
まあ 気に入ったんなら
ちゃんと育て上げろよ。
00:21:16
3年後には 新妻エイジを
追い抜いてると思います。
00:21:21
3年も ヒット飛ばせなきゃ お前が
飛ばされるぞ。 頑張れ。 ハハハハハハ。
00:21:33
(練習生たち)
「あめんぼ赤いな あいうえお。→
00:21:36
浮藻に小エビも泳いでる。→
00:21:39
柿の木 栗の木 かきくけこ。
キツツキ こつこつ 枯れけやき。→
00:21:44
ささげに酢をかけ さしすせそ。
その魚 浅瀬で刺しました」。
00:21:51
(川崎)あ~あ 夏休みも
今日で終わりだってのに→
00:21:54
サイコーのやつ つきあい悪いよなあ。
00:21:57
(鈴木)ほんと あのエロい映画
見たかったのにな。
00:22:01
(川崎)休み中も ずっと
高木と つるんでたっぽいぜ。
00:22:04
(鈴木)2人で予備校でも
行ってたんじゃないの。
00:22:06
(川崎)かもな~。
00:22:11
年内に ビシッとしたの 1本 作ろう。
00:22:14
もう ラノベ向きとか言わせない。
00:22:17
おれも指摘されたところ直して
すげえ絵にしてみせる。
00:22:21
今 考えると 「ふたつの地球」は→
00:22:24
何が正しいのか
分からないみたいなテーマってのが→
00:22:27
いかにも
小説のオチっぽかったんだな。
00:22:32
もっと スカッとする話で
よかったのかも。
00:22:35
分かってるじゃん。
おれも そう思ってた。
00:22:38
思ってたのかよ。
なら 早く言えよ。
00:22:41
ネームには口出さない
約束だったじゃん。
00:22:45
じゃあ 今度は 口出していいから
時間かけて練って→
00:22:48
お互い 納得した話でいこうぜ。
シュージンがいいなら それでいいよ。
00:22:53
(生徒たち)え~!
00:22:57
近いって!
00:23:01
(担任教師)うるさい。→
00:23:03
先生が中学の時は こうだった。→
00:23:08
2学期は この席順でいく。
00:23:13
心の声
(2人)授業中
おなかとか鳴ったら どうしよう。
00:23:18
♪♪~
(エンディングテーマ)
00:23:22
♪♪~
00:25:35
(高木秋人)いよいよだな。
00:25:36
中坊の おれたちが
持ち込みできるなんて夢みたいだ。
00:25:41
(真城最高)原稿さえ書けば
誰でもできるって。
00:25:44
問題は その作品が
どう評価されるかだ。
ああ。
00:25:48
(服部 哲)「週刊少年ジャック」の
服部です。 よろしく。
00:25:52
(2人)よろしくお願いします!
00:25:55
(哲)早速だけど
原稿 見せてもらっていい?