00:00:03
(カール)
“ゼウスが かく仰せられると”
00:00:06
“土地に住む人間の種族は
種をまき 畑を耕すことを覚えた”
00:00:11
(シューバルト)
カール また発音が違うぞ
00:00:14
(カール)すみません
気を付けているのですが
00:00:18
だが うまくなった
00:00:20
初めてここに来た時には
00:00:23
なんて出来の悪い学生が
来たもんだと思ったがね
00:00:27
えっ ええ…
00:00:29
(シューバルト)彼はどうした?
(カール)え?
00:00:32
あの日本人医師は?
00:00:35
あ… 世界中を飛び回ってるとか
聞いています
00:00:40
そうか…
00:00:43
いつか あの男と
もう一度 会いたいものだ
00:00:48
(カール)はい
00:00:51
♪~
00:02:06
~♪
00:02:25
(鐘の音)
00:02:33
(ライヒワイン)
仕事を始めた? そりゃよかった
00:02:36
で どんな仕事に?
00:02:38
(エヴァ)
インテリア・インテリアコーディネーター
00:02:40
(ライヒワイン)なるほど
00:02:42
あんたなら家具の目利きも
相当なもんだろうしな
00:02:47
(エヴァ)インテリアっていっても
そっちの方面と ちょっと違うのよ
00:02:51
(ライヒワイン)ん?
00:02:52
(エヴァ)
キッチンのコーディネーター
00:02:54
ほほう
00:02:56
笑っちゃうでしょ?
00:02:57
今まで ろくにキッチンなんかに
立ったことない私が
00:03:02
じゃ 今度 うちのキッチンを
お願いしようかな
00:03:05
(エヴァ)いいわよ
00:03:07
いや しかし
あんたの見立てたキッチンじゃ
00:03:09
高くつきそうだな
00:03:11
ちょっとね
00:03:13
(ライヒワイン)ハハハハハ
(エヴァ)フッ…
00:03:17
酒は飲んではいないね?
00:03:19
(エヴァ)ええ 1滴も
(ライヒワイン)結構だ
00:03:22
ゆっくりゆっくりいこう
00:03:25
焦っても 同じように
今日は過ぎゆき 明日は来る
00:03:31
(エヴァ)“幸せっていうのは
そんなもんだ”でしょ?
00:03:36
聞き飽きたか?
00:03:40
幸せ… か…
00:03:44
彼は私が駅で待っているだけで
幸せだって言ってた
00:03:49
マルティンという男か
00:03:57
(エヴァ)不思議ね 人間って…
00:04:00
悲しみは どんどん薄れていって
00:04:02
楽しかった記憶ばかりが残っていく
00:04:06
人間って 都合よくできてるわよね
00:04:12
(ライヒワイン)
だから生きていけるんだ
00:04:22
(スーク)紹介します
00:04:24
(スーク)
この人がヴァーデマン弁護士
00:04:27
あなたにかけられた嫌疑を
晴らしてくれた人です
00:04:30
グリマーさん
00:04:33
(ヴァーデマン)あなたに関して
分かるかぎりのことは調べ上げた
00:04:37
511キンダーハイム出身
00:04:40
東ドイツの諜報部員として
00:04:42
ジャーナリストを装い
世界中を旅行
00:04:46
その後 フリーランスとして
人権問題を調査し続けた
00:04:51
あの大きなバッグに
00:04:52
それらの裏付けとなる資料が
山ほど入っていた
00:04:56
だが 結局 分からずじまいに
終わったのは
00:05:00
あなたの本当の名前だ
00:05:04
(スーク)
ヴォルフガング・ヴォルフガンググリマー
00:05:07
{\an8}(足音)
00:05:08
{\an8}(足音)
00:05:08
(ルンゲ)名前だけじゃない
00:05:11
(ルンゲ)
彼は何も語らずに逝った
00:05:14
(スーク)ルンゲ警部…
00:05:16
(ルンゲ)
もう警部じゃないよ スーク刑事
00:05:19
(スーク)あ… 警察大学校の
教授になられたと伺いましたが
00:05:25
(ルンゲ)このところ
娘とよく会話するようになった
00:05:29
会話といっても 電子メールだがね
00:05:33
これまで私たち親子は
何も語らずに過ごしてきた
00:05:38
お互い何も知らずに生きてきた
00:05:47
人間は 一生のうちで
00:05:49
どれほどのことを
伝えることができるのか…
00:05:53
たくさん
話したいことがあったろうに
00:05:56
うまいビールを飲みながら…
00:06:05
(ライヒワイン)
デュッセルドルフに戻る?
00:06:07
(エヴァ)ええ
契約してる会社があっちなの
00:06:10
(ライヒワイン)そうか
00:06:13
大丈夫かい?
00:06:14
あそこは
君にとっては いろいろと…
00:06:17
“逃げ出そうとしても無駄だ”
00:06:19
“大切なのは事実と向き合い
前に進むことだ” でしょ?
00:06:25
(ライヒワイン)うむ
00:06:27
(立ち上がる音)
00:06:30
これ 適当に
処分しておいてくださる?
00:06:32
(ライヒワイン)ん…
00:06:35
(エヴァ)それじゃ
00:06:37
ああ… 元気でな
00:06:40
何かあったら すぐに言ってくれ
00:06:42
私も Dr.(ドクター)ギーレンも
いつでも力になれる
00:06:47
ディーターと そして彼もな
00:06:53
よろしく伝えといて
00:06:55
ああ
00:06:57
(ドアの開閉音)
00:07:04
(ライヒワイン)
“Dr.テンマの事情聴取 続く”
00:07:08
“事件の全貌 いまだつかめず”
00:07:13
“ルンゲ警部の証言 始まる”
00:07:16
“ヨーロッパ史上最悪の
連続殺人事件に発展か?”
00:07:22
“Dr.テンマ 完全な潔白”
00:07:24
“警察当局は Dr.テンマに
謝罪の意を表明”
00:07:30
“事件の動機 いまだつかめず”
00:07:33
“真犯人とされる
謎の青年の正体は?”
00:07:38
“ミュンスター大学医学部
Dr.テンマを教授として招聘(しょうへい)”
00:07:43
“Dr.テンマ 固辞の意思 動かず”
00:07:47
“Dr.テンマ
国境なき医師団に参加”か
00:07:52
どんどん記事が小さくなる
00:08:00
(深呼吸)
00:08:02
人間って都合よくできてる… か
00:08:07
(ヘッケル)よう ディーター
00:08:09
ちょっと見ないうちに
でかくなったな
00:08:11
(ディーター)ヘッケルおじさんは
00:08:13
ちょっと見ないうちに
ますます ずる賢そうになったね
00:08:16
相変わらず口の減らねえガキだな
00:08:19
(ディーター)悪いけど
サッカーの練習に行くから
00:08:22
付き合ってられないよ
00:08:23
えっ お… おい
ちょっ ちょっと待てよ
00:08:27
テンマは帰ってきたのかよ?
00:08:30
ったく 国境なき医師団だか何だか
知らねえけど
00:08:34
かっこつけて
金にならねえことしやがって
00:08:36
全然 つかまりゃしねえ
00:08:38
帰っていたら どうすんの?
00:08:41
ちょっと前に
やつから引き受けた仕事
00:08:43
経費と労力 考えると
報酬が全然 足りねえんだよ
00:08:48
(ディーター)
テンマが おじさんに仕事?
00:08:50
簡単に“人捜し”とか言いやがって
えれえ苦労したんだ
00:08:55
警察のマル秘資料
盗むまでしたんだぜ
00:08:58
捕まったら どうなるか…
00:09:01
んっ…
00:09:03
お… おい!
00:09:06
テンマに この請求書 渡しとけ!
00:09:09
払えないなら
また もぐりの医者やらせるから
00:09:12
覚悟しとけってな!
00:09:30
(看護師)お待ちかねですよ
00:09:32
このところ
いらっしゃらなかったから
00:09:35
(テンマ)いや…
ちょっと外国のほうへ
00:09:39
これ 皆さんで
召し上がってください
00:09:42
(看護師)まあ これはこれは
00:09:56
(足音)
00:10:32
(女性)いい天気
00:10:35
たくさんの葉が光合成してる
00:10:39
命… 数えきれない遺伝子
00:10:44
メンデルって ご存じ?
00:10:46
ええ 遺伝の法則の…
00:10:49
(女性)私 メンデルと
同じ大学に通っていました
00:10:55
ブルノ大学
00:10:57
チェコ南東部
モラビア地方の都市ですね
00:11:00
(女性)いいところよ
00:11:02
(テンマ)今度 ぜひ行ってみます
00:11:06
(女性)ありがとう
何度も通ってくださって
00:11:10
とても楽しい時間を
過ごさせてくれて
00:11:14
いえ…
00:11:16
(女性)今日は とてもいい気分
00:11:19
何でも お話しできそうな気がする
00:11:27
どんな怖い話でも…
00:11:31
(風の音)
00:11:38
(女性)私に
00:11:40
聞きたいことがあるんでしょ?
00:11:51
あなたは…
00:11:57
双子のお母さんですね?
00:12:09
{\an8}(女性)ええ
00:12:17
(女性)私は彼を愛した
00:12:20
彼は あの男に殺された
00:12:24
それは あの男の実験だった
00:12:30
私は あの男を
00:12:33
決して許さない
00:12:40
私が死んでも
00:12:42
私の中で どんどん
大きくなっていく子供たちが
00:12:47
必ず あの男に罰を下す
00:12:56
手を…
00:12:59
手を… 離さないで… 手を…
00:13:13
本当の怪物は… 誰?
00:13:20
あの子たちは 生きているのね?
00:13:26
(テンマ)ええ 元気です
00:13:30
(ニナの荒い息)
00:13:50
(女性)思い出したの
00:13:52
(テンマ)何をですか?
00:13:55
二度と思い出せないかもしれない
00:13:58
今 言わなきゃ…
00:14:03
あの子たちに名前を付けたの
00:14:08
あの子たちの名前はね…
00:14:13
(ニナの荒い息)
00:14:23
(ノック)
00:14:24
(クローネッカー)入りたまえ
00:14:26
(ニナの荒い息)
00:14:36
(クローネッカー)うーん…
00:14:38
相変わらずの遅刻常習犯だな
約束の時間に10分遅れだ
00:14:44
(ニナ)ハァ ハァ…
00:14:46
すみません
クローネッカー教授
00:14:49
(クローネッカー)
フン… まあ いいだろう
00:14:52
今日は何のために呼び出されたのか
分かってるだろうね
00:14:58
君の卒業論文に関してだ
00:15:01
(ニナ)あ…
00:15:05
前に来たまえ
00:15:07
あ… はい
00:15:17
君に いろいろあったのは
知っている
00:15:20
休学中の遅れを取り戻すのも
大変な苦労だったろう
00:15:25
でも それは
成績の言い訳にはなりませんし…
00:15:29
そのとおりだ
00:15:34
ところで 君の論文だが…
00:15:39
トップだ
00:15:40
あっ…
00:15:43
これは 私が教えた
これまでの学生の中で
00:15:47
最も優れた論文だ
00:15:49
あ… あ…
00:15:52
よく頑張ったな
00:15:55
私は君を誇りに思う
00:15:59
あ… ありがとうございます
00:16:03
(クローネッカー)君の志望は?
(ニナ)あっ
00:16:06
はい 弁護士です
00:16:09
うむ… 君によって
多くの人が救われることを祈る
00:16:15
下がってよろしい
00:16:17
はい!
00:16:19
あ…
00:16:23
ただし
00:16:26
(ニナ)あ…
00:16:27
法廷では遅刻は許されないよ
00:16:31
フロイライン・フロイラインニナ・フロイラインニナフォルトナー
00:16:36
はい!
00:16:38
(携帯電話の着信音)
00:16:41
(ニナ)はい もしもし
00:16:43
あっ ディーター?
00:16:45
(ディーター)卒業 どうだった?
ダメでも僕がついてるよ
00:16:48
あら 頼もしい
00:16:50
今度 会った時
慰めてもらおうかな
00:16:53
(ディーター)
もったいぶったって声で分かるよ
00:16:55
やったんだね おめでとう!
00:16:57
ありがとう
00:16:58
これからが
まだまだ大変なんだけどね
00:17:01
(ディーター)
お祝いだ 早く帰っておいでよ
00:17:04
すぐにってわけにはいかないんだ
00:17:06
アルバイトあるし
友達との予定も結構…
00:17:10
(ディーター)何言ってるんだよ
テンマが帰ってくるんだよ
00:17:17
さっき電話があったんだ
00:17:19
でも またすぐ国境なき医師団で
00:17:21
外国に行っちゃうんだってさ
00:17:23
(ニナ)あ… いつ?
00:17:26
(ディーター)あしたには帰るって
だからニナも早く!
00:17:34
(学生)ああ ニナ
あしたの予定なんだけど…
00:17:37
(ニナ)ごめん
ちょっと行けなくなった!
00:17:40
(ニナ)テンマ… テンマに会える
00:17:43
(ニナ)ハァ ハァ…
00:17:52
{\an8}(看護師)
ああ こんにちは
00:17:55
{\an8}(テンマ)
ご苦労さまです
00:18:26
あれからずっと眠り続けているね
00:18:30
聞こえるかい?
00:18:35
君のお母さんと話をした
00:18:38
君を愛していた
00:18:43
君の本当の名前を聞いた
00:18:46
君には名前があった
00:18:48
(風の音)
00:19:11
{\an8}(心臓の鼓動)
00:19:12
{\an8}(心臓の鼓動)
00:19:12
(ヨハン)Dr.テンマ
00:19:13
{\an8}(心臓の鼓動)
00:19:14
{\an8}(心臓の鼓動)
00:19:14
あなただけに
聞いてほしいことがある
00:19:18
あの時 あの怪物が
僕の前に現れた
00:19:27
(速くなる心臓の鼓動)
00:19:35
(女性)やめて!
この子たちに手を出さないで!
00:19:39
やだー! 近寄らないで!
00:19:43
(ボナパルタ)これは実験だ
00:19:45
(女性の荒い息)
00:19:48
(ボナパルタ)どちらかを残して
どちらかを連れていく
00:19:52
(女性)はっ
00:19:54
(ボナパルタ)これは実験だ
00:19:56
(女性)あ…
00:19:58
(ボナパルタ)
さあ どちらを連れていく?
00:20:02
(女性の荒い息)
00:20:07
(ヨハン)離さないで
00:20:09
(アンナ)離さないで
00:20:13
(ヨハン)離さないで
00:20:14
(アンナ)離さないで
00:20:17
(アンナ)
母さん… 手を… 離さないで…
00:20:24
あ…
00:20:28
(母親)こっち…
00:20:30
いえ…
00:20:32
こっち!
00:20:35
(アンナ)やだー!
00:20:43
(ヨハン)母さんは
僕を助けようとしたの?
00:20:47
僕と妹を間違えたの?
00:20:50
どっち?
00:20:52
要らなかったのは どっち?
00:20:59
(テンマ)ハァッ!
00:21:00
(荒い息)
00:21:25
(テンマ)そろそろ行くよ
00:21:49
(ドアの閉まる音)
00:21:59
(風の音)
00:22:29
{\an8}♪~
00:23:33
{\an8}~♪