00:00:16
(ヨハン)僕を撃てよ
00:00:19
(リーベルト)さあ
準備は いいかい?
00:00:21
緊張する必要はないよ
00:00:23
(リーベルトの妻)
髪留めが曲がってるわ
00:00:25
直してあげるわね
00:00:29
笑って
00:00:31
そうそう とても かわいいわ
00:00:33
さあ 手をつなぎましょう
00:00:37
(リーベルト)
それじゃあ 行こうか
00:00:42
(シャッター音)
00:00:43
(アンナ)あっ
00:00:44
(シャッター音)
00:00:51
(リポーター)先日 東ドイツから
西側へ亡命したリーベルト氏が
00:00:54
妻子を伴って
マスコミの前に姿を現しました
00:00:58
リーベルト夫妻は
疲れた様子もなく
00:01:01
二卵性双生児の
娘さん 息子さんと共に
00:01:04
明るい表情を見せてくれました
00:01:06
(記者)リーベルトさん
西側のご感想は?
00:01:09
それが 実に難しいんです
00:01:12
(記者)はっ?
00:01:13
自由に何でも発言できると思うと
00:01:15
逆に 言葉が
見当たらないということですよ
00:01:18
(記者)なるほど
(記者)そうですか
00:01:18
{\an8}(記者たちの笑い声)
00:01:20
{\an8}(記者たちの笑い声)
00:01:20
{\an8}(記者たちの笑い声)
00:01:20
(リーベルト)
とりあえず その質問の答えは
00:01:22
(リーベルト)
とりあえず その質問の答えは
00:01:23
妻や子供たちの笑顔です
00:01:29
(記者)お子さんたちも
自由を満喫されているようですね
00:01:33
(リーベルト)
ええ そのようですね
00:01:36
(記者)では 現在の東側の実情を
お話しいただけますか?
00:01:40
(アンナ)お兄ちゃん
何やってんの?
00:01:43
(アンナ)お兄ちゃん?
00:01:50
どっちに入ってる?
00:01:52
(アンナ)うーん… こっち
00:01:55
(ヨハン)当たり
はい アンナのものだよ
00:01:59
やった~ ドングリ
00:02:02
(ヨハン)じゃあ もう1回
どっちに入ってる?
00:02:05
(アンナ)うーん… こっち
00:02:08
(ヨハン)また 当たり
はい アンナのものだよ
00:02:11
すごーい
00:02:14
お兄ちゃん 両手 開いてみて
00:02:19
な~んだ どっちにしても
当たりだったんじゃない
00:02:23
(ヨハン)そうだよ
00:02:25
だって ここにあるドングリは
全部 アンナのものだもん
00:02:31
ウフフ
00:02:36
(アンナ)
ねえねえ お兄ちゃん 見た?
00:02:37
ここに来るまでの車の外の街
00:02:40
向こうとは全然 違うの
00:02:42
きれいなお店が いっぱい
お洋服も おもちゃも いっぱい
00:02:47
ねえ お兄ちゃんも見たでしょ?
00:02:50
(ヨハン)うん 見たよ
00:02:53
あれも全部 アンナのものだよ
00:02:57
ホントに?
00:02:58
(ヨハン)ホントさ
00:03:00
(アンナ)何で私のものなの?
00:03:02
(ヨハン)何でもさ
00:03:03
フフッ フフッ フフフフ…
00:03:08
♪~
00:04:24
~♪
00:04:44
(来訪者)テレビで見ましたよ
リーベルトさん
00:04:49
とりあえず 中に入ってくれ
00:04:51
(雷鳴)
00:04:54
お兄ちゃん 誰か来たのかな?
00:04:59
お兄ちゃん… お兄ちゃん?
00:05:07
お兄ちゃん?
00:05:09
(雷鳴)
00:05:12
(銃声)
00:05:13
(アンナ)はっ
00:05:15
(銃声)
00:05:39
は… ああっ…
00:05:48
うう… ああ…
00:06:11
あっ
00:06:17
お兄ちゃん
00:06:20
(雷鳴)
00:06:25
(アンナ)お兄ちゃんが…
やったの?
00:06:27
今までも?
00:06:31
ヨーゼフおじさんや
クララおばさんが死んだのも
00:06:35
ベーデガーさんが死んだのも
全部 お兄ちゃんがやったの?
00:06:41
今日は特別さ
00:06:42
お兄ちゃんがやったの?
00:06:46
だって 今日は
怪物がやってきたんだ
00:06:49
(アンナ)みんな
お兄ちゃんが殺したのね?
00:06:52
怪物が
僕らを連れにやってきたんだ
00:06:57
手を出して
00:07:08
僕を撃てよ
00:07:09
(アンナ)うっ うっ… うう…
00:07:13
ううっ… うっ うっ…
00:07:17
(ヨハン)撃ったら
銃を布で拭いて
00:07:19
窓の外へ投げ捨てるんだ
00:07:22
(ヨハン)ちゃんと頭を撃つんだよ
(アンナ)うう… うう…
00:07:25
(ヨハン)撃ったら逃げるんだ
00:07:27
怪物に捕まらないように
逃げるんだ
00:07:30
大丈夫
00:07:31
僕が死んでも 君は僕で 僕は君
00:07:35
うっ うっ… うう…
00:07:40
うう… ううっ
00:07:43
(銃声)
00:07:45
(ニナ)あの夜…
あの雨の日の夜 誰かが来た
00:07:50
(リプスキー)ニナ?
00:07:51
誰かが あの屋敷に来た
00:07:53
(リプスキー)ニナ…
(ニナ)誰?
00:07:55
誰が来たの? 誰?
00:07:59
(ヨハン)怪物がやってきたんだ
00:08:00
はっ
00:08:03
(リプスキー)あっ ニナ
00:08:06
ニナ!
00:08:08
(人々のざわめき)
00:08:10
(野次馬)ひでえな
(野次馬)ああ
00:08:15
(野次馬)何だって
この屋敷から火が出るんだ?
00:08:18
(野次馬)
誰も住んでなかったはずだぞ
00:08:20
(野次馬)放火じゃないかって
00:08:22
(野次馬)物騒だな
00:08:24
(男性)Dr.(ドクター)テンマ
(テンマ)あっ
00:08:26
はっ…
00:08:28
ちょっと ご同行願えますか?
00:08:31
ヴォルフ将軍がお呼びです
00:08:34
ヴォルフ… 将軍
00:08:42
(ヴォルフの荒い息)
00:08:53
(ヴォルフの荒い息)
00:08:58
ヴォルフ将軍
00:09:03
(ヴォルフ)Dr.テンマ
00:09:05
はい
00:09:06
やはり 君も呼ばれたのだね
00:09:08
“赤いバラの屋敷で待っている”
ヨハンからの手紙だ
00:09:15
私は このプラハの病院に
たどり着くのが やっとだったがね
00:09:20
あなたにも あの手紙が…
00:09:22
皮肉な話だ
00:09:24
ヴォルフという人間に 手紙を
よこすのは ヨハンだけになった
00:09:29
うっ うう…
00:09:32
(テンマ)あまり
しゃべらないほうがいいです
00:09:34
(ヴォルフ)
私は軍人の家庭に生まれた
00:09:38
選ばれた者としての道が
生まれながらに約束されていた
00:09:43
それが今では
00:09:45
私を私として知る者は
あの怪物だけだ
00:09:50
赤いバラの屋敷が
燃え落ちたそうだね
00:09:54
今頃 あそこから きっと
白日の下に姿を現しているだろう
00:10:00
私のように名前を奪われた者たちが
00:10:04
んっ?
00:10:07
(警官)出火場所の特定は
できたのか?
00:10:09
(消防隊員)はい
どうやら2階の広間ですね
00:10:12
(消防隊員)あの場所の
集中的な燃え方からすると⸺
00:10:15
灯油か ガソリンか
(警官)灯油?
00:10:17
(警官)やはり 放火か
00:10:19
もっと詳しく調べてみないと
分からないんですが
00:10:22
広間の壁が壊された跡があるんです
00:10:25
どういうことだ?
00:10:26
(警官)さあ…
00:10:28
(消防隊員)あの…
ちょ… ちょっと来てください
00:10:30
(警官)どうした?
00:10:31
(警官)ハァ ハァ… ああっ
00:10:35
こ… これは…
00:10:39
(消防隊員)バラの木の根元に
何か見えたので 掘ってみたら⸺
00:10:41
次から次へ出てくるんです
00:10:45
(ヴォルフ)長い年月を経て
彼らは白日の下に現れる
00:10:51
だが もう
彼らの名前を知る者などいない
00:10:59
(ライヒワイン)何てことだ
00:11:00
(ヴァーデマン)
完全に燃え落ちている
00:11:02
テンマの行方を知る 唯一の
手がかりの屋敷が これでは…
00:11:07
(警官)どいて!
通して どいて!
00:11:12
何だ?
00:11:14
(警官)ほ… 本庁へ連絡してくれ
大至急だ!
00:11:17
白骨が… 大量の人骨が!
00:11:20
(テンマ)46人?
00:11:22
(ヴォルフ)
ああ 私は そう聞いている
00:11:26
1981年
00:11:28
あの屋敷で46人の人間が
こつぜんと姿を消した
00:11:33
当時 東ドイツで私が得た
わずかな情報だ
00:11:39
あの屋敷で
ある実験が行われていた
00:11:42
(テンマ)実験…
00:11:44
(警官)はい
下がって 下がって
00:11:45
(ヴォルフ)これは私の推理だが…
00:11:47
(ヴォルフ)これは私の推理だが…
00:11:47
{\an8}(警官)見物人を
退去させろ!
00:11:48
{\an8}(警官)見物人を
退去させろ!
00:11:50
{\an8}恐らく あそこで
あの子供が
00:11:53
{\an8}生まれた
00:11:58
(風の音)
00:12:05
(アンナ)お兄ちゃん… 寒いよ
00:12:08
もう歩けない…
おなかが すいたよ…
00:12:13
ああ…
00:12:17
お兄ちゃん
私たち 死んじゃうのかな…
00:12:26
お兄ちゃん 名前を呼んで
00:12:31
私の名前を呼んで…
00:12:38
僕たちには名前がないんだよ
00:12:42
名前を呼んで 名前を…
00:13:02
(ヴォルフ)毛布を
(部下)はっ!
00:13:04
(ヴォルフ)そして温かい飲み物を
(部下)はっ!
00:13:33
(ヴォルフ)
“ヨハン すてきななまえなのに”
00:13:40
ヨハン
00:13:42
あの子たちに名前はなかった
00:13:46
私が あの子に
ヨハンと名前を付けた時
00:13:49
彼の中の何かが
目覚めてしまったのか
00:13:53
いや 昔の話は もう 意味がない
00:13:58
これからの話をしよう
00:14:01
私に明日は もう ないが…
00:14:04
うっ ああ…
00:14:06
もう いいです ヴォルフ将軍
もう しゃべらないで
00:14:10
(ヴォルフ)エヴァ・ァハイネマンは
(テンマ)あっ
00:14:12
エヴァ・ァハイネマンは
私たちの組織の人間と共にいる
00:14:18
あっ…
00:14:19
(ヴォルフ)
4人で統括していた私たちの組織
00:14:24
殺されたゲーデリッツ教授と
そして 私
00:14:28
エヴァは
他の残りの2人のもとにいる
00:14:33
(テンマ)あっ
00:14:34
(ヴォルフ)エヴァを
利用しようとしている
00:14:37
引き合わせてはいけない
00:14:39
(テンマ)えっ?
00:14:40
(ヴォルフ)私は
生きていようが いまいが
00:14:43
もう 歯止めにならない
00:14:47
暴走が始まろうとしている
00:14:49
止めてくれ 救ってくれ テンマ
00:14:54
Dr.テンマ
00:14:58
私の名はヘルムート
ヘルムート・ヘルムートヴォルフ
00:15:04
私がヘルムートだと
知っている人間は
00:15:08
もう この世にはいない
00:15:11
名前を呼んでくれ
00:15:13
それが私の生きた証しだ
00:15:17
(テンマ)ヘルムート…
(ヴォルフ)名前を…
00:15:20
ヘルムート
あなたはヘルムート・ヘルムートヴォルフだ
00:15:23
おお…
00:15:24
これがヨハンの見た風景か
00:15:36
名前のない世界だ
00:15:44
ヴォルフ将軍
00:16:09
(ディーター)燃えちゃったね
00:16:11
門にも鍵が掛けられてる
00:16:13
(ディーター)きっと 警察が
立ち入り禁止にしたんだね
00:16:18
あっ
00:16:23
(リプスキー)んっ…
(ディーター)無理だよ
00:16:27
(ニナ)リプスキーさん
00:16:29
子供の頃から朗読会で過ごした
この場所が大事なのは分かります
00:16:33
(ニナ)でも…
(リプスキー)ニナ
00:16:36
(リプスキー)君にとっても
大事な場所だったはずだ
00:16:40
君の記憶を呼び戻すきっかけになる
場所だったかもしれないのに
00:16:46
あの幻影…
00:16:48
この屋敷の大広間で
00:16:50
たくさんの人が
折り重なるように… 死んでた
00:16:54
ニナの見た幻って
ホントだったもんね
00:16:57
ニュース見て びっくりしたもん
00:16:59
“赤いバラの屋敷から
46人の遺骨 見つかる”って
00:17:04
お兄さんが… ヨハンが
君に語ったとおりだったんだね
00:17:09
兄は…
ヨハンは何を見てしまったの?
00:17:12
とてつもなく恐ろしいこと
本当の恐怖
00:17:17
もし 私が その時…
その場所に 私がいたとしたら
00:17:24
私が怪物になっていたの?
00:17:27
ニナ ここが燃えて
よかったのかもしれない
00:17:33
僕は もっと つらいかと思った
00:17:36
この場所を失ったら
生きていけないかと思った
00:17:40
でも そんな気持ちにはならない
00:17:43
ここが
悲しい思い出ばかりだからかな
00:17:48
僕は優秀な生徒じゃなかった
それが悲しい
00:17:53
あの人の期待に応えられなかった
それが悲しい
00:17:58
もしも… もしも
あの人の期待に応えられていたなら
00:18:04
でも 現実は そうじゃなかった
00:18:07
僕は 要らない子になった
00:18:10
リプスキーさん
お父さん お母さんは?
00:18:14
いるよ
でも 一緒に暮らしたことはない
00:18:19
ニナの記憶が…
もし ニナの記憶が戻ってくるなら
00:18:24
楽しい思い出が
戻ってくればいいのに
00:18:27
楽しい思い出?
00:18:29
(リプスキー)そう 楽しい思い出
00:18:35
何だろう 楽しい思い出って…
00:18:38
(ディーター)テンマが言ってたよ
00:18:41
楽しい思い出がなかったら
作ればいいって
00:18:46
これから作ればいいって
テンマが言ってた
00:18:50
♪~
00:19:21
(手拍子)
00:19:33
~♪
00:19:40
(ニナ)ディーター
口の周り ケチャップで真っ赤よ
00:19:43
ニナだって
00:19:44
えっ?
00:19:46
(ディーターたちの笑い声)
00:19:52
(リプスキー)ニナ
(ニナ)ん?
00:19:55
今 新しい人形劇を
作ってるんだけどさ
00:19:58
どんな人形劇?
00:20:00
今まで 人は 僕の人形劇なんて
見たがらなかった
00:20:05
でも 今度のは みんなが
喜んでくれるかもしれない
00:20:08
(ニナ)見せて その新作
00:20:11
(ディーター)見たい 見たい
00:20:17
(リプスキー)
私は記憶をなくした女の子
00:20:20
怪物に追われる夢を見る
怪物を追いかける夢を見る
00:20:27
でも 私は歌が好き
00:20:30
踊るのも好き
00:20:34
いつか すてきな夢を見る
00:20:36
いつか その夢が かなう日が来る
00:20:41
いつか…
00:20:43
(ニナ)あっ
(ディーター)ん…
00:20:45
この先が思いつかない
00:20:48
この女の子の物語を
ハッピーエンドにしたいんだ
00:20:52
でも まだ思いつかないんだ
00:20:57
ハッピーエンドにしたいんだ
00:21:00
ハッピーエンドにしたいんだ
00:21:06
ありがとう
00:21:10
(リプスキー)女の子は
旅立つ決意をしました
00:21:13
この旅が
どんな旅になるか分かりません
00:21:17
この先 何が待ち構えているか
分かりません
00:21:22
でも 女の子は きっと
力強く旅を続けます
00:21:29
女の子は 何度も何度も振り返り
手を振ります
00:21:33
何度も 何度も
00:21:36
そして行ってしまいました
00:21:45
ハッピーエンドを探しに…
00:22:02
(ノック)
00:22:04
(リプスキー)んっ? あっ…
00:22:06
ニナ ニナ!
00:22:08
ニナ 戻ってきて…
00:22:10
あっ
00:22:12
(ルンゲ)捜しましたよ
リプスキーさん
00:22:15
あなた 赤いバラの屋敷のあるじ…
00:22:18
フランツ・フランツボナパルタの
息子さんですね
00:22:29
{\an8}♪~
00:23:33
{\an8}~♪