00:00:06
(老人)あ… あっ
00:00:08
(テンマ)あ… ん?
00:00:10
(鳥の鳴き声)
00:00:16
何てことだ…
00:00:20
あっ… ああ…
00:00:23
もう大丈夫だよ
00:00:26
もう二度と…
00:00:28
もう二度と
この森で血は流れない
00:00:33
そうだろう?
00:00:35
(鳥の鳴き声)
00:00:49
♪~
00:02:04
~♪
00:02:26
(電車のベル)
00:03:07
(ライヒワイン)
何も覚えていない?
00:03:10
(ライヒワイン)あの時
屋上で何をやっていたのかな?
00:03:13
少しでも覚えてることを
おじさんに話してくれないかな
00:03:19
(マルティンの母)ちゃんと
お話ししなさい マルティン
00:03:21
あなた 1階のひさしに当たって
植木に引っかからなかったら
00:03:24
死んでたかもしれないのよ!
00:03:27
ちゃんと先生にお話しして
00:03:29
もうこれ以上 こんなバカなことが
続かないようにしなくちゃ
00:03:32
まあ まあ まあ 奥さん
00:03:35
だって もし
この子が死んでいたら私…
00:03:39
私… ああっ
00:03:40
(ライヒワイン)
いいですか 奥さん
00:03:42
私は お子さんの
カウンセリングに来てるんです
00:03:46
(マルティンの母)
分かってます 分かってます…
00:03:49
けど 先生… ああっ
00:03:51
(ライヒワイン)ちょっと
外でお話ししましょう 奥さん
00:03:54
(泣き声)
00:04:00
(ドアの開く音)
00:04:01
(泣き声)
00:04:05
ディーター
そこで おとなしくしてるんだぞ
00:04:09
病室の中に入ったりするなよ
00:04:13
(マルティンの母)
先生のお孫さんですか?
00:04:15
(ライヒワイン)あっ いや
ちょっと預かってるんですよ
00:04:59
(ディーター)や… やあ
00:05:01
(マルティン)やあ
00:05:17
(ディーター)僕 ディーター
00:05:20
(マルティン)僕はマルティン
00:05:23
(ディーター)痛い?
00:05:25
(マルティン)何が?
00:05:26
その傷… その包帯の傷さ
00:05:31
怖かったろ?
屋上から落ちた時
00:05:34
(布団をめくる音)
(ディーター)あ…
00:05:38
ダ… ダメだよ 何やってんだよ!
00:05:42
(マルティン)
そこのバッグの中に靴が入ってる
00:05:44
取ってくれ
00:05:45
(ディーター)何言ってるんだよ
寝てなきゃダメだよ!
00:05:50
靴 取れよ
00:05:58
(ディーター)
どこ行くつもり? 怒られるよ
00:06:02
怒られたからって何だよ
00:06:04
(ディーター)あ…
00:06:06
(マルティン)
別に怒られることなんて怖くないさ
00:06:10
ああ 言ってたとおりだ
00:06:14
“生き返ったら外に出てごらん
世界が変わっているよ”
00:06:20
ううん
00:06:21
世界が変わったんじゃなくて
僕が変わったんだ
00:06:32
だって 僕は選ばれたんだから
00:06:50
(マルティン)退屈だ
00:06:56
世界が こんな退屈だなんて
00:07:05
あっ 危ない!
00:07:07
(クラクション)
(ブレーキ音)
00:07:09
(ディーター)ひっ
00:07:10
(クラクション)
(ブレーキ音)
00:07:18
君もおいでよ
怖いものなんかないからさ
00:07:35
(老人)ハァ… フゥ…
00:07:45
あっ ああっ ああ…
00:07:48
な… 何てことするんだよ!
00:07:51
(マルティン)フン!
00:07:52
ううっ… ひいっ…
00:07:55
見ろよ ほら 怖がってるぜ
00:07:58
やめろよ!
00:08:00
見ろって言ってるんだよ
00:08:02
助け… あっ…
00:08:05
“死にたくないよ
助けてくれよ”か?
00:08:10
(うめき声)
00:08:13
いいだろう 生かしといてやろう
00:08:17
ヘッ ヒャハハハッ
00:08:19
(老人)ハァ ハァ ハァ…
00:08:23
(うめき声)
00:08:32
(マルティン)
さっきの質問に答えてやるよ
00:08:35
(ディーター)え?
00:08:37
屋上から落ちた時
怖かったかって聞いたろ
00:08:40
あっ うん…
00:08:43
怖いわけないだろ
あれは遊びなんだから
00:08:47
あ… 遊びって
00:08:50
だ… だって
何人も死んでるんだよ!
00:08:55
楽しいんだよ 遊びだもん
00:09:00
誰もいないビルの屋上のへりに
2人で向かい合って立つんだ
00:09:05
そして目をつぶって
互いに1歩1歩 近付く
00:09:09
これは決闘なんだ
00:09:12
落ちようが何をしようが
生き残れば勝ちだ
00:09:15
何で そんなこと…
00:09:18
運命と賭けをするのさ
00:09:21
生き残ったほうは選ばれた者だ
00:09:23
(ディーター)あ…
00:09:25
言ってる意味 分かんないかな
00:09:28
生き残ったほうは
また遊びができるんだよ
00:09:32
遊び… 遊びって…
00:09:35
世界がつまらないからさ
00:09:38
楽しいぞ
00:09:40
運命に選ばれた者だけが
遊び続けることができるんだ
00:09:46
ハハハハッ 分からないか?
00:09:49
君は僕らの仲間かと思ったよ
00:09:52
(マルティン)来いよ 見せてやる
(ディーター)え?
00:09:55
見て分からなかったら
ホントのバカってことさ
00:10:06
(ディーター)おい おい
まさか屋上に行くつもりじゃ…
00:10:11
(マルティン)
選ばれた者… 優秀な者が生き残る
00:10:15
あの人がそうさ
00:10:17
あの人って?
00:10:19
この遊びを教えてくれた人さ
00:10:22
誰なの?
00:10:24
仲間だよ 僕ら優秀な子供たちの
00:10:30
さあ 早く来いよ!
00:10:32
ぼ… 僕 いいよ
00:10:33
いいから来いってば!
00:10:35
放してよ!
00:10:36
(マルティン)
君なら分かるはずだ 来い!
00:10:38
(ディーター)やめて!
00:10:40
あ…
00:10:43
(マルティン)
誰にやられた? その傷
00:10:47
君の親かい?
00:10:49
こんなことされても
やつらの側にいるつもり?
00:10:52
こんなことされても
00:10:53
まだ くだらない世界に
埋もれているつもり?
00:10:57
来いよ 来て見てみろよ!
00:11:02
はっ…
00:11:06
(マルティン)どうだい?
ここからの眺めは
00:11:10
どんな気分だい?
00:11:13
立てよ 何 怖がってるんだ?
00:11:18
立って目をつぶって歩いてみろよ
00:11:22
立てよ
00:11:26
分かったよ
00:11:27
君の言ってること よく分かるよ
00:11:31
(マルティン)え?
00:11:34
(ディーター)
世界は真っ暗だと思ってた
00:11:37
あしたは真っ暗だと思ってた
00:11:43
君は何が好物だ?
00:11:46
僕は この前 とっても
おいしいソーセージを食べた
00:11:50
でも 死んだら
もう二度と食べられなくなる
00:11:53
臆病者
00:11:54
僕はサッカーが好きだ!
00:11:57
でも 死んだら
ボール蹴れなくなる
00:11:59
弱虫
00:12:00
ライヒワイン先生が好きだ!
00:12:03
秘書のメレスさんも優しい人だ!
00:12:06
でも 死んだら会えなくなる!
00:12:10
怖いものなんか なくならない
00:12:13
だから 大人になるんだって
言ってた
00:12:17
あしたは いい日だって
テンマが言ってた!
00:12:23
死んだら…
死んだら テンマに会えなくなる
00:12:28
(風の音)
00:12:31
あっ うっ うわっ…
00:12:34
あっ!
00:12:37
うわっ あっ
00:12:38
ひゃっ!
00:12:41
あっ
00:12:42
怖いよ~!
00:12:45
ひゃー!
00:12:48
(ディーター)うっ
00:12:49
(ディーターの力み声)
00:12:56
(ディーター)うっ!
00:12:57
慌てちゃダメだ
ゆっくり ひざついて
00:13:03
(マルティン)なれないよ…
00:13:06
え…
00:13:07
僕はヨハンみたいになれない
00:13:10
ヨハン?
00:13:13
ヨハンは
もっとすごい遊びをしてるんだ
00:13:16
ヨハンは
もうすぐ殺されるって言ってた
00:13:21
もうすぐ日本人に
撃ち殺されるって言ってた
00:13:33
(少年)
僕は ちゃんと目をつぶって
00:13:35
屋上の端っこ 歩いたんだ
00:13:37
(少年)
ホントだよ ちゃんと歩いたんだ
00:13:40
ちっとも怖くなかったよ
00:13:42
それで目を開けたら
00:13:43
向こうから歩いてきてるはずの
ヨアヒムが消えてたんだ
00:13:47
見たんだよ
00:13:49
人が死ぬ瞬間を この目で見たんだ
00:13:51
ホントに人は死ぬんだ
00:13:53
(ノック)
00:13:56
(少年の母)お茶 どうぞ
00:13:58
(家庭教師)あっ どうも
00:14:00
(少年の母)
まったく この子ったら
00:14:02
自分が何やったか
分かってないみたいなの
00:14:05
この子は生きてたから
よかったけど
00:14:07
亡くなったヨアヒムの
親御さんの気持ちを思うと…
00:14:12
あなたからも ひと言
言ってやってくださいね
00:14:15
あなたの言うことなら
この子 聞くみたいだから
00:14:20
あ~あ
毎日 ああやって小言だよ
00:14:25
なーんにも分かってないくせに
00:14:27
家からは出してくんないし
テレビも漫画も禁止だし
00:14:32
(家庭教師)退屈そうだね
00:14:34
何か持ってきてあげるよ
00:14:36
えっ ホント?
00:14:38
(家庭教師)漫画は禁止でも
絵本とかならいいんだろ?
00:14:42
チェッ! 絵本か
そんなの つまんないよ
00:14:50
ねえ この前 言ってた
すごい遊びは まだなの?
00:14:54
もうすぐ撃ち殺されるかも
しれないって言ってたじゃないか
00:14:57
ドキドキするよ いつ頃なの?
00:15:00
いつ その日本人は撃ってくるの?
00:15:03
ねえ ヨハン!
00:15:14
(ゲールマン)ヘルマン・ヘルマンヘッセ
「荒野のおおかみ」の初版本
00:15:18
そして これは
ホフマンの「夜の画集」の初版本
00:15:22
ゲーテ詩集も全巻そろっている
00:15:25
(ゲールマン)
なんともはや ミュンヘン大学
00:15:28
フリードリッヒ・フリードリッヒエマヌエル校
図書館 館長の私でさえ
00:15:33
目のくらむような蔵書ですなあ
00:15:36
(シューバルト)
私は大学へ行けずに
00:15:38
独学で ここまで来た人間だ
00:15:41
せめて本だけでも
読んでおこうと思った結果だよ
00:15:45
これだけの蔵書を私どもの図書館に
寄贈していただけるとは
00:15:50
いやあ 感謝の言葉もございません
00:15:53
私は目が見えなくなり
もはや読むことができない
00:15:58
この書斎で眠らせているより
00:16:01
学生たちの手元にあるほうが
ためになるだろう
00:16:06
はい 貴重な本の数々ですが
一般閲覧も考えております
00:16:11
ああ そうそう
保管場所も決まっておりますし
00:16:15
セレモニーの件もありますので
00:16:17
ぜひ 当図書館のほうで ご相談を
00:16:21
(クンツ)警備のほうは?
(ゲールマン)は?
00:16:23
シューバルト氏が
世間に出られるようになってから
00:16:26
物騒な連中の動きが気になります
00:16:30
招待客のチェックは
くれぐれも厳重にお願いします
00:16:33
(ドアの閉まる音)
00:16:34
そうだな? ヨハン
00:16:36
(ヨハン)ええ
00:16:38
(シューバルト)
この蔵書寄贈を思いついた⸺
00:16:39
ヨハンとカールが
00:16:41
図書館へ行って
下見するのがいいだろう
00:16:47
(ゲールマン)
館長のゲールマンです
00:16:50
よろしく
00:16:54
(ヨハン)よろしく
00:17:05
(ゲールマン)ここが
00:17:05
シューバルト氏の
蔵書を収める部屋となる
00:17:09
一般の閲覧者は
ここまでは入れない
00:17:12
君たちも来たことがないだろう
00:17:15
保存に最適な温度 湿度はもちろん
00:17:18
盗難 火災に関しても万全だ
00:17:21
(カール)すごい本の数々だ
00:17:24
人類の財産だな ヨハン
00:17:28
人類の財産か…
00:17:35
(ゲールマン)
そして こちらの中央ホールで
00:17:38
蔵書寄贈のセレモニーを
行う予定だ
00:17:41
執事の方がおっしゃっていたとおり
警備には万全を期するので
00:17:46
シューバルト氏にも
安心して来ていただきたい
00:17:49
ええ
00:17:51
父も喜んで出席すると思います
00:17:54
なあ ヨハン ん?
00:18:15
どうした? ヨハン
00:18:17
あっ… ああ
00:18:20
ちょっと失礼します
00:18:32
(司書)ん?
00:18:35
何かお探しですか?
00:18:38
(ヨハン)ええ
00:18:40
友達のために
何かいい絵本はないかと
00:18:45
(司書)お友達?
00:18:47
ええ 友達です
00:18:50
そうねえ…
00:18:51
じゃあ
これなんか いかがかしら
00:18:58
ねっ すてきな絵でしょう
00:19:01
ああ いいですね
00:19:04
でも 少し大人っぽいかな
00:19:07
あっ お友達って
大人の方じゃなくって?
00:19:10
それじゃあ これはどうかしら
00:19:16
あっ! いけない
00:19:23
あっ どうも すみません
00:19:29
あ…
00:19:32
あ… 私 おっちょこちょいで
いつもこんな調子なんです
00:19:42
あっ そうそう これ
00:19:45
私のおすすめの絵本なんですけど…
00:19:48
ん?
00:19:52
それが気に入ったんですか?
00:19:56
あら いい絵ね
00:19:58
誰の本かしら ちょっと失礼
00:20:02
エミル・エミルシェーベ?
モラビア出版
00:20:07
チェコのプラハにある出版社ね
00:20:09
チェコには いい絵本作家が
たくさんいますからね
00:20:13
でも シェーベって作家は
聞いたことないわね
00:20:18
あまり有名じゃない人かしら
00:20:22
(ヨハン)あ…
(司書)ん?
00:20:24
(ヨハン)ああ…
00:20:26
{\an8}(心臓の鼓動)
00:20:27
{\an8}(心臓の鼓動)
00:20:27
どうなさったの?
00:20:28
{\an8}(心臓の鼓動)
00:20:41
あ… あ… あっ あっ ああっ
00:20:44
あっ ああ…
00:20:46
あっ ああ あ…
00:20:49
ああっ あっ ううっ
00:20:51
あっ…
00:20:53
うう… ああー!
00:21:00
(司書)あっ
00:21:01
だ… 誰か!
00:21:04
誰か来て!
00:21:06
(走る足音)
00:21:25
(職員)フゥ…
しかし 今年の夏の暑さときたら
00:21:30
ハァ… ひどいもんだ
00:21:42
(足音)
00:22:07
(テンマ)ここだ
00:22:22
ここから 彼を…
00:22:29
{\an8}♪~
00:23:33
{\an8}~♪