00:00:02
(足音)
00:00:21
(トゥルンカ)やあ アンナ
風が冷たくなってきたね
00:00:26
おっ? 何だい
今日は随分 不愛想だなあ
00:00:35
(ヤルカ)あら
00:00:37
(ヤルカ)今 お帰り? アンナ
00:00:44
ん?
00:01:06
(ディーター)ニナ!
00:01:09
(ニナ)ハァ ハァ ハァ…
00:01:12
(ディーター)この辺の通りは
もうレストラン閉まっちゃってるよ
00:01:16
ホテルに戻ろうよ ニナ
00:01:20
んっ…
どうしたの? ニナ
00:01:24
(ニナ)この通りの人たち
なぜか私を知ってる
00:01:31
私を アンナって呼ぶの
00:01:39
♪~
00:02:55
~♪
00:03:13
(グリマー)おや?
これは どういうことだ?
00:03:17
(テンマ)連続殺人事件の容疑者の
スークが収容されているのに
00:03:21
警官もパトカーも見当たらない
00:03:23
(グリマー)ああ
00:03:24
(テンマ)
とりあえず 私は様子を見てきます
00:03:28
いや どっちにしろ
俺が行かなきゃ意味がない
00:03:36
中も同じだ
警察の影も形もない
00:03:42
(テンマ)あの…
00:03:43
こちらに スークというケガ人が
収容されているはずなんですが
00:03:47
(看護師)は?
00:03:48
ヤン・ヤンスーク 刑事なんですが…
00:03:50
(看護師)刑事?
00:03:51
ブルノ通りの廃屋で
大勢のケガ人が…
00:03:54
(看護師)ああ 失業者が
ケンカで数名 担ぎ込まれた あれ?
00:03:58
(テンマ)
ん… 失業者? ケンカ?
00:04:02
(看護師)ええ
00:04:03
(グリマー)ニュースでは
言ってる意味が分からなかったが
00:04:05
そういうことになってるんだろう
00:04:08
で その人たちは
今 どこの病室に?
00:04:11
ひどいケガでしたけど
処理後に 皆さん転院されました
00:04:15
(グリマー)あっ…
(テンマ)あっ 転院って…
00:04:16
どこに?
00:04:17
さあ?
救急車が来て 6名全員乗せて
00:04:22
6名って言ったら
俺たちを襲った連中の人数だ
00:04:26
スークは?
ヤン・ヤンスーク刑事は?
00:04:28
銃で撃たれてたんですが…
00:04:31
銃撃されて担ぎ込まれた
患者さんなんて いませんけど
00:04:35
じゃあ ヤン・ヤンスークという急患が
ここに運び込まれたという記録は…
00:04:41
ありません
00:04:42
(テンマ・テンマグリマー)はっ…
00:04:46
(テンマ)511キンダーハイムに
関する研究資料とテープ…
00:04:50
(グリマー)ああ
元511キンダーハイムの院長で
00:04:55
プラハで もぐりの養護施設を
やっていたペドロフが
00:04:58
死ぬ間際に俺に託した
00:05:00
それを一体
誰が狙ってるんですか?
00:05:03
本当のところは分からない
ただ⸺
00:05:06
旧チェコスロバキア秘密警察の
連中が
00:05:09
それを欲しがっているのは 確かだ
00:05:12
(テンマ)その資料とテープは
今 どこに?
00:05:15
手元にはない
あるところに預けてある
00:05:19
それのせいで
スーク刑事は大ケガを負い
00:05:22
病院から何者かにさらわれた
00:05:24
連中 欲しいものを
手に入れるためには
00:05:27
スークに何をするか
分かったもんじゃない
00:05:32
ハァ~ 弱ったなあ
00:05:35
その資料とテープの内容
どういうものですか?
00:05:39
(グリマー)資料は
専門用語が羅列された研究データ
00:05:43
それに名簿
00:05:45
詳しくは見ていない
00:05:47
テープも
さわりだけしか聞いていない
00:05:50
何が録音されていたんですか?
00:05:52
子供の声だ
00:05:54
子供?
00:05:55
あれは 薬物を投与されて
尋問されたんだろう
00:06:00
その子は名前を聞かれて
“ヨハン”と答えていた
00:06:05
ん? どうした? Dr.(ドクター)テンマ
00:06:08
511キンダーハイム
00:06:11
研究資料
00:06:13
ヨハン…
00:06:16
テープは 今 どこに?
00:06:18
はっ
00:06:23
(男性)ご同行 願えますか?
00:06:26
(グリマー)スークは どこだ?
00:06:28
(男性)お互い
ビジネスライクにいきましょう
00:06:30
スークは?
00:06:32
ご同行 願えますか?
00:06:37
(グリマー)俺は ともかく⸺
00:06:39
Dr.テンマ あんたが これ以上
巻き込まれることはない
00:06:43
いや 私も
旧チェコスロバキア秘密警察に
00:06:48
尋ねたいことがあるんです
00:06:50
(グリマー)
何しようとしてんだい あんた
00:06:55
まあ こいつらが
00:06:58
話し合いのできるような
やつらかどうかが問題だな
00:07:13
(グリマー)まさか⸺
00:07:14
食事にご招待…
なんてことはないよな
00:07:23
(ランケ)
ようこそ どうぞこちらへ
00:07:26
あの男は…
00:07:28
どうやら
旧チェコスロバキア秘密警察の大物
00:07:31
(テンマ)ああ 新聞社で調べた
カレル・カレルランケ大佐
00:07:36
(グリマー)
お偉方じきじきのお出ましか
00:07:41
(ランケ)今回は 部下が
手荒なまねをして申し訳なかった
00:07:45
指揮系統の手違いで
意図しない事態になってしまった
00:07:50
我々は今 大変な誤解を受けている
00:07:53
君らにも世間にもね
00:07:56
あたかも殺しの集団のようにね
00:08:00
スークは?
00:08:01
(ランケ)
我々の関係の病院に収容した
00:08:04
命に別状はない
00:08:06
(グリマー)
誤解が聞いてあきれるな
00:08:09
(ランケ)今回の事件で
我々は誰一人として殺していない
00:08:13
あの女は?
00:08:14
女?
00:08:15
あの金髪の女は
00:08:17
あんた方の差し金で
動いているんじゃないのか?
00:08:20
情報は入っているが
我々とはまったく無関係だ
00:08:24
我々も非常に迷惑をしている
00:08:27
我々が欲しいのは人の命ではない
00:08:31
あのテープと資料を
ドイツの友人が欲しがっていてね
00:08:35
我々はペドロフと慎重に
折衝を重ねていた
00:08:38
そのやさき 彼は殺された
00:08:41
よほどの金が動くようだな
00:08:43
(ランケ)そう これはビジネスだ
00:08:47
私はビジネスの話をしたいだけだ
00:08:50
スークと引き換えに
あのテープと資料を頂きたい
00:08:53
どこにあるか知らないな
00:08:55
そういうやり取りはやめましょう
00:09:03
(グリマー)あんなこと
繰り返しちゃいけない
00:09:06
ん?
00:09:07
(グリマー)あんなものが
世の中にあったら
00:09:09
どういうことになるか
00:09:12
あんなこと
二度と繰り返しちゃいけない
00:09:15
その手の話も
今は置いておきましょう
00:09:19
この商談には関係のない話だ
00:09:23
(グリマー)私は出身者だから
00:09:25
(ランケ)ん?
00:09:27
私は 511キンダーハイムの
出身者だから
00:09:38
君 年齢は?
00:09:41
あそこを出たのは いつだね?
00:09:44
一応 14歳ってことになっているが
00:09:47
30年前の話だ
00:09:50
(ランケ)入ったのは?
00:09:51
さあね 多分 7つか8つだろう
00:09:54
(ランケ)1963年前後だね?
00:09:57
(グリマー)さあ…
00:10:01
(ランケ)この子を知らないか?
00:10:07
私の甥(おい)だ
00:10:10
60年代初め 私は表向き
チェコスロバキア大使館の⸺
00:10:14
情報将校として
ベルリンに駐在していた
00:10:18
私には妹がいてね
ドイツ人と結婚した
00:10:23
しかし 妹とその夫は
00:10:24
ベルリンの壁を越えて亡命を図り
射殺された
00:10:29
そして その子だけが残った
00:10:33
私がサインしたんだ
00:10:36
話では そこは
すばらしい環境だった
00:10:41
過去のある子供たちを
00:10:43
将来の共産主義をしょって立つ
エリートに育て上げる⸺
00:10:47
理想的な教育の場
00:10:51
私が 511キンダーハイムに
その子を入れるため
00:10:56
サインしたんだよ
00:11:00
(グリマー)分からない
00:11:03
記憶がないんだ
00:11:05
あそこでのこと それ以前のこと
まるで覚えてないんだ
00:11:11
自分の本当の名前すらね
00:11:15
(テンマ)あなたは…
00:11:18
あなたは とんでもないものまで
金に換えようとしている
00:11:22
あなたの甥御さんの⸺
00:11:23
実験データをも含まれた資料を
売ろうとしている
00:11:31
話がそれたようだ
00:11:33
この件はビジネスとして
前向きにお考え願いたい
00:11:41
分かりました
00:11:42
今日のところは
お引き取りいただいて結構です
00:11:51
いい返事を期待していますよ
00:11:53
丁重にお送りしろ
00:12:00
(テンマ)どうするんです?
今 大切なのはスークの救出だ
00:12:06
要求をのめば
彼はスークを解放すると思います
00:12:15
グリマーさん?
00:12:17
(グリマー)ココア…
00:12:18
(テンマ)ん?
00:12:23
(グリマー)思い出した
00:12:25
はっ…
00:12:26
思い出した
00:12:30
(グリマー)あっ
(テンマ)グリマーさん!
00:12:35
(グリマー)ハァ ハァ ハァ…
週1回のココアが…
00:12:39
ココアの支給が楽しみだった
00:12:44
ハァ… 僕が熱を出して
医務室で寝ている時
00:12:48
ココアを持ってきてくれた
自分のココアを
00:12:52
あんなに好きだったのに
00:12:54
ああ… おいしかった
00:12:56
あんなにおいしいココアは
初めてだった
00:13:00
だから 何かあいつに
お礼がしたかった
00:13:03
すると あいつは言ったんだ
00:13:06
“僕のことを覚えていてくれ”って
00:13:10
あの頃 みんなの間で
はやってたんだ
00:13:13
自分のことを友達に話すんだ
00:13:16
よく分からないけど 奇妙な授業で
00:13:20
毎日毎日 自分の記憶が
薄れていくんだ
00:13:24
自分の名前すら
忘れそうになるんだ
00:13:27
だから… だから 友達に
自分のことを覚えていてもらうんだ
00:13:34
あいつは ココアが好きで
00:13:35
絵を描くのが好きで
虫が好きだった
00:13:39
でも 昆虫採集は
虫を殺すから嫌いだった
00:13:42
一番楽しかったことは
両親と森に行った時だ
00:13:45
たくさんチョウを採った
00:13:47
でも あいつは帰り際に
虫籠からチョウを逃がしたんだ
00:13:50
あいつの夢は
昆虫学者になることだった
00:13:56
あ… あいつの…
00:14:00
あいつの名前は
アドルフ・アドルフラインハルト!
00:14:12
(ランケ)私の甥だ
00:14:30
(アンナ)おかえり
00:14:33
(チャペック)
彼に隠し事をしちゃ ダメだよ
00:14:36
(走る足音と荒い息)
00:14:46
(ボナパルタ)人間はね…
00:14:50
何にだってなれるんだよ
00:14:55
(男性)乾杯!
00:15:00
(カエル)やあ おかえり
00:15:03
(カエル)やあ おかえり
00:15:05
(カエル)やあ おかえり
00:15:08
(ニナ)ああ…
00:15:12
(ディーター)
どうしたの? ニナ
00:15:14
(ニナ)私…
00:15:16
私 ここを知ってる
00:15:20
ここに来るまでの道
00:15:23
この風景
00:15:27
この看板
00:15:29
全部知ってる
00:15:31
ここに住んでたの?
00:15:33
分からない
00:15:35
(ニナ)ただ…
(ディーター)ただ?
00:15:37
怖い
00:15:44
このドアも知ってるの?
00:15:47
分からない でも…
00:15:49
あっ
00:15:53
怖いから…
00:16:12
はっ この階段も…
00:16:14
知ってる
00:16:23
グリマーさん 一晩考えた
あなたに聞いてほしいことがある
00:16:30
Dr.テンマ あのテープも資料も
あんたには関係ない
00:16:34
いや 私にも…
00:16:36
(グリマー)
話している暇はなさそうだ
00:16:37
ん?
00:16:38
やつら 交渉事が
待ちきれないらしい
00:16:42
旧チェコスロバキア秘密警察の
連中が わざわざお出ましだ
00:16:50
(ランケ)じっくりと
考えていただけましたかな?
00:16:53
ああ テープも研究資料も
渡す気はない
00:17:01
(ランケ)スーク刑事が
どうなってもいいというのかね?
00:17:04
(グリマー)
スークの身に何かあったら
00:17:06
永久に あのテープと資料は
この世から消えてなくなる
00:17:10
そういうくだらないやり取りは
やめましょう
00:17:13
(グリマー)ただし…
00:17:15
テープの音だけは
聞かせてやってもいい
00:17:21
条件は あなたが
それらを売ろうとしている⸺
00:17:24
ドイツの友人との
ビジネスを忘れることだ
00:17:27
あくまで あなたが
個人的に聞きたいというのなら
00:17:30
テープの音を聞かせてあげてもいい
00:17:33
いや あなたは聞くべきだ
00:17:37
あなたが 511キンダーハイムに
送り込んだ甥のためにも
00:17:41
あのテープに吹き込まれた
ヨハンという少年の声を
00:17:46
それが君の取り引きかね?
00:17:48
私は取り引きなどしていない
00:17:50
(テンマ)もうやめてくれ
00:17:52
こんなこと
やってる場合じゃないんだ
00:17:56
今 こうしている間にも
00:17:57
そのテープのせいで
誰かが殺されるかもしれないんだ
00:18:02
あなた方 チェコスロバキア
秘密警察の関係者が
00:18:05
今回 何人殺されたと
思ってるんですか!
00:18:08
彼らは 誰に殺されたと
思ってるんですか!
00:18:12
そのテープを
一番欲しがっている人間だ
00:18:15
そのテープに吹き込まれた声の主
00:18:18
ヨハンにだ
00:18:21
Dr.テンマ?
00:18:23
何の話か さっぱり分からないな
00:18:26
とぼけないでくれ!
00:18:28
あなたはドイツの友人に
00:18:29
あれがどういうテープなのか
聞いているはずだ
00:18:32
何を手に入れろと言われたんだ?
00:18:36
“怪物の正体”
ただ それだけだ
00:18:40
んっ…
00:18:41
(テンマ)あなた方を
巻き添えにしたくなかった
00:18:44
だが 全て話すよ
また何人も殺される前に
00:18:52
10年前の話だ
00:19:00
(ランケ)なるほど
00:19:02
で そのヨハンは
自分のルーツを求めて
00:19:06
ここプラハにやってきた
00:19:08
(テンマ)分からない
00:19:10
それら全てを 消し去ろうと
しているのかもしれない
00:19:14
あなた方は 15年前
一体 何をしたんだ
00:19:18
ミカルスカ地区
チェドック橋近くに
00:19:20
ある親子がいた
00:19:22
その親子は ある日
秘密警察に連れ去られた
00:19:25
3匹のカエルの看板のある建物から
ヨハンを連れ出して何をした
00:19:33
(ニナ)この階段…
00:19:38
{\an8}(女の子)お兄ちゃん…
00:19:39
(ニナ)あっ
00:19:39
{\an8}(女の子の泣き声)
00:19:40
{\an8}(女の子の泣き声)
00:19:41
どうしたの? ニナ
00:19:44
この階段を引きずられるように
00:19:47
連れていかれた
00:19:48
誰が?
00:19:52
お兄ちゃん?
00:19:54
(ランケ)確かに あの頃 私は
全ての情報が耳に入る立場にあった
00:19:59
だが 3匹のカエル 親子の連行…
00:20:03
まったく記憶にない
00:20:05
(テンマ)とぼけないでくれ!
00:20:07
(ランケ)とはいっても
私にも入ってこない情報があった
00:20:11
あの男がやっていたこと
00:20:14
秘密警察のどの部署に
属しているのか
00:20:17
どの命令系統の下にいるのかも
分からなかった あの男
00:20:23
いろいろな人間を
00:20:24
どういう理由か報告することもなく
自由に拘束できた
00:20:29
彼は一体 何をやっていたんだろう
00:20:33
彼は たかだか大尉なのに
00:20:35
1軒の豪華な屋敷を
仕事場として与えられていた
00:20:39
そう 彼は
00:20:41
“赤いバラの屋敷の男”と
呼ばれていた
00:20:44
その男が関係していたと言うのか?
00:20:48
(ランケ)非常に物腰の優雅な
静かな男だった
00:20:52
制服を着ず
お茶とケーキを好んでいた
00:20:56
その男の名は?
00:20:58
フランツ・フランツボナパルタ
00:21:01
フランツ・フランツボナパルタ
00:21:04
ただ 本名かどうかは分からない
00:21:07
彼にはペンネームもあったからな
00:21:10
ペンネーム?
00:21:11
彼は 絵本作家でもあったんだよ
00:21:18
(ディーター)このドアも怖いの?
00:21:20
(ニナ)私…
00:21:23
私 この中で絵本を読んでいて…
00:21:30
このドアを開けて
00:21:32
誰かが帰ってきた
00:21:40
(テンマ)絵本?
(ランケ)ああ
00:21:42
奇妙な絵本だったよ
「なまえのないかいぶつ」とかいう
00:21:50
何もないよ ニナ
00:21:55
(ニナ)この記憶は 何?
00:21:59
私はここで
絵本を読んでいたはずなのに
00:22:03
でも ドアを開けて帰ってきたのは
00:22:08
私
00:22:18
私が
00:22:19
私を迎えている?
00:22:26
(アンナ)おかえり
00:22:29
{\an8}♪~
00:23:33
{\an8}~♪